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予想に反して、Aはルクがつけた髪飾りの存在に一日を通して気づくことは無かった。
今日も素知らぬ顔で装飾をつけてみたのだが、やはり気づいてはいない。
机に頬杖をつきじっと観察しているが、だんだんといつも通りの生活を送るAに少し不満が溜まる。
早く彼女が喜ぶ顔を見たいのに。
「ねぇ、ルク」
「あー？」
「なんでそんなに機嫌悪いの」
「なんでもねぇよ」
「機嫌悪い…」
勿論、原因が彼女であることも、ルクが勝手に抱いている感情ということも承知の彼はそっぽを向いていぶかしむAの視線から逃れた。
そんな自分がいつかウルドに指摘されたようにあまりにも人間臭く、笑えてくる。
今の彼女は居なかった時期、三十年も前。
その頃からルクはどこか人間らしさというものを身に付けていたように思う。
それはAとういうまた別の少女の存在が空っぽの吸血鬼だった彼に何かを植え付けたことで始まった。
それを今さら忘れろと言うのも難しいし、吸血鬼らしくなれと言うのも少し難しい。
何より、彼女のことは片時も忘れたくはない大切な存在だ。
胸のなかに植え付けられた何かを忘れると、共に彼女のことも忘れ去ってしまいそうで怖かった。
「なに怒ってるの」
「なんでもねぇって」
「…もう、知らない。今日は寝る」
ばたんと手に持っていた物を置き、肩を怒らせて寝支度をするため、脱衣場に置かれた寝間着を取りに行ってしまったAの後頭部には、相変わらず美しい装飾が輝いていた。
まだまだ陽が高い時間だと言うのに、眠って時間を忘れようと考える彼女はまるで永遠と続く平穏に退屈する吸血鬼のようだ。
けたたましい音と共に勢い良く閉じられた扉を眺め、部屋に取り残されたルクはため息を吐いた。
やがてAは服を着替えて戻ってきた。
髪はほどかれ、完全に寝る気でいる彼女に呆れを覚えながら、今度はずいと差し出された手を見る。
その手のひらの上に鎮座していたのは間違いなく、ルクが彼女の髪の毛につけたあの髪飾りであった。
シルバーが美しく輝いている。
「これ、髪の毛についてたから返すね」
「…………………は？」
「ん…？ルクが貸してくれたものじゃないの？」
「あーもう、ちがうって」
きょとんとするA。
悪気は無い。
そんな様子に頭痛を覚えた。
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こんぺいとう(プロフ) - RiAさん» ありがとうございますー！この頃更新が遅くなって日付を跨ぐこともしばしばですが１日１更新は必ず守っていきますので、どうぞよろしくお願いします♪ (2020年10月2日 19時) (
レス) id: 61b77cc65e (このIDを非表示/違反報告)
RiA(プロフ) - こんぺいとう様の作品全部大好きです(＞＜)ずっと応援してます！更新楽しみにしてます！ (2020年10月1日 11時) (レス) id: 5404c24946 (このIDを非表示/違反報告)
こんぺいとう(プロフ) - ありがとうございます！ちょっぴり切なくてシリアスですが、今後もお付き合いくださいー！ (2020年9月30日 21時) (レス) id: 61b77cc65e (このIDを非表示/違反報告)
ひなどり。(プロフ) - ストーリー凝っててすきです…応援してます (2020年9月30日 19時) (レス) id: b8745ce36d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こんぺいとー | 作成日時：2020年9月24日 22時
