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Aが身動ぎしなくなったことで再び眠りの世界へ旅立ったことを感じたルクはゆっくりと目蓋を押し上げた。
気配に敏い彼はAの意識が一度浮上したことを感じ取って、目蓋を閉じたまま彼女の動向を探っていたのだ。
もちろん彼女が再び眠りに落ちる前の言葉はしっかりと耳が拾った。
胸がざわめく。
「大好きなんて他人に言われたことねーなぁ…」
ふと浮かんだのは今、胸元にしなだれかかるようにして眠っている彼女に瓜二つのAの事だ。
怒らせてしまった際に大嫌いと叫ばれた記憶が甦る。
どんなにルクの中の他の記憶が褪せても、彼女に関することは色褪せることなく、昨日の事のように思い出すことがでる。
彼女はその血の不味さに興味惹かれ、ルクが面白半分で日本から拐ってきた人間だった。
ロシアに来てからは多少なりと良い生活をさせていたつもりだが、ルクの至らない点も多くあったことだろう。
人間を飼うのではなく、一から育てるということが何を意味しているか理解していなかったルクではない。
ただ、考えていた以上に大変で苦戦し、彼女に多くの迷惑をかけた。
その事はいつかルクの庇護から彼女が離れる時に詫びなければならないと思ったが、別れ際はそれすらもままならなかった。
ルクが望んだ通り人間としての輝かしいまでの生を全うした彼女だったが、彼女はルクに何を思い、吸血鬼と人間の間に横たわる隔たりをどう感じていたのだろうか。
そこまで考えが至ると今度は、もし、彼女が今際の際に吸血鬼になってでも延命したいと望んでいたら…と考えが過る。
彼女が望んだなら、吸血鬼にしていたと思う。
この事はルクもギリギリまで悩んでいた。
本当にこのままでいいのか、呪いを分けてでも生かすべきではないか、と何度も思った。
だが、できなかった。
人間としての生を彼女から奪う。
たったそれだけのことができなかった。
景色を見て感動する彼女が、小さなことで怒り、喜ぶ彼女が、ルクは人間にしかできないとても意味のあることだと理解していたからこそ、そんな素晴らしい心を奪い殺すなどできなかった。
つくづく臆病だったと思う。
結局のところ、彼女と共に居た時や彼女の事を考えた時の心のざわめきが何を意味するのか分からない。
釈然としないながらも考える事すらあの時から放棄した。
今も彼女の事を思うと心が胸がざわめく。
ルクが訊けば、彼女は大好きだと言ってくれただろうか。
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こんぺいとう(プロフ) - RiAさん» ありがとうございますー！この頃更新が遅くなって日付を跨ぐこともしばしばですが１日１更新は必ず守っていきますので、どうぞよろしくお願いします♪ (2020年10月2日 19時) (
レス) id: 61b77cc65e (このIDを非表示/違反報告)
RiA(プロフ) - こんぺいとう様の作品全部大好きです(＞＜)ずっと応援してます！更新楽しみにしてます！ (2020年10月1日 11時) (レス) id: 5404c24946 (このIDを非表示/違反報告)
こんぺいとう(プロフ) - ありがとうございます！ちょっぴり切なくてシリアスですが、今後もお付き合いくださいー！ (2020年9月30日 21時) (レス) id: 61b77cc65e (このIDを非表示/違反報告)
ひなどり。(プロフ) - ストーリー凝っててすきです…応援してます (2020年9月30日 19時) (レス) id: b8745ce36d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こんぺいとー | 作成日時：2020年9月24日 22時
