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Aは眠りに落としていた意識を浮上させた。
いまいち覚醒しきらない意識の中で、頭に撫でられているようなそんな感触を感じる。
「おっ、起きたかー?」
ルクの声がする。
薄暗い地下世界から救い出してくれた優しい吸血鬼。聞くと安心感に包まれる彼の声。
あまりの心地良さで、再び眠りに落ちそうになってしまう意識をなんとか引き上げながら、Aは頭を上げた。
どうやらルクの仕事が終わって構ってもらえる時間になるまで待っていた筈が、いつの間にか寝入ってしまったらしい。
眠い目を擦って目を開く。
「俺の膝で寝られる人間なんて後にも先にもお前くらいだよ」
柔らかな枕だと思って頭を乗せていたのはどうやらルクの足らしかった。
きちんとソファに座る体制になっても寝起きなのは変わらずで、しつこく目を擦っていると止めるかのようにルクにその手を掴まれる。
擦り過ぎると良くないらしい。
何かと甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる彼は、本当に吸血鬼なのかと疑うほど優しかった。
人の良い笑顔でにこにこと笑って時々寂しそうな表情もするが、そういう時は別の話題にしたり、手をぎゅっと握ればまた笑顔で笑ってくれる。
こんなにも穏やかな時間は初めてだった。
常に家畜と虐げられ、その家畜の中でも最底辺のカーストに位置する弱い存在だったAはこうして穏やかな時間の中で安らぐことすらままない生活をサングィネムで送っていた。
ルクが連れ出してくれなければ恐らく、永遠と吸血鬼に飼われる生活を続けていたのだろう。
他人にも虐げられ、まともに助けを乞うほどのことも満足に出来なかったAとしては相手が吸血鬼であろうが、ルクが救いの手を差しのべてくれた唯一の存在であり、救世主であり、手を取ったあの瞬間からAの全てだった。
彼を心から信頼している。
「どうする?遊ぶか?」
「うん」
「そうか、何で遊ぶ?」
「ルク」
「俺で?遊ぶ…んだよな?」
「うん!遊んで!」
「えぇ…俺〜?力加減間違えそうで怖いんだけど」
ルクの手を両手で握り、キラキラと目を輝かす彼女に押しきられる形でルクはそのあと数時間も振り回されることになるのだった。
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こんぺいとう(プロフ) - RiAさん» ありがとうございますー!この頃更新が遅くなって日付を跨ぐこともしばしばですが1日1更新は必ず守っていきますので、どうぞよろしくお願いします♪ (2020年10月2日 19時) (レス) id: 61b77cc65e (このIDを非表示/違反報告)
RiA(プロフ) - こんぺいとう様の作品全部大好きです(><)ずっと応援してます!更新楽しみにしてます! (2020年10月1日 11時) (レス) id: 5404c24946 (このIDを非表示/違反報告)
こんぺいとう(プロフ) - ありがとうございます!ちょっぴり切なくてシリアスですが、今後もお付き合いくださいー! (2020年9月30日 21時) (レス) id: 61b77cc65e (このIDを非表示/違反報告)
ひなどり。(プロフ) - ストーリー凝っててすきです…応援してます (2020年9月30日 19時) (レス) id: b8745ce36d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こんぺいとー | 作成日時:2020年9月24日 22時