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昼下がり。
友だちに指定された…というか、もはやお決まりとなりつつあるカフェで相手を待つ。
スマホの画面には、現在進行形で行われるトーク。相手は坂田くん。
ぽん、と返ってきたメッセージは「打ち合わせ始まる!いってく」と言う、彼らしいっちゃ彼らしいメッセージ。
途中で途切れてるし、焦りすぎ。そんなギリギリまでやらなくてよかったのに。
くす、と笑みが溢れた。
それから何もすることが無くなってしまって、ぼーっと彼とのトーク履歴を遡る。なかなかにばかみたいな会話しかしてないなぁ。
すると、カランコロンと耳障りの良い音がして、顔を上げると待ち合わせ相手だった。
こっちだよ、と手を上げると彼女はにぱっと笑い駆け寄ってきた。
「遅い、15分も遅刻〜」
「ごめんって、途中ですんごいの見ちゃってさ!」
「すんごいのお?」
興奮気味にそう捲し立てる彼女。
気になったけど、とりあえず何か頼も、とメニューを開く。
彼女はメニューをまじまじと見つめ、時折これ美味しそう、可愛い〜など声を上げる。
良い意味でも悪い意味でもまだまだ元気な友だちなのだ。
しばらくして注文が決まり、注文をする。
彼女がこれと、これとーと言うが、本当にそんだけ食べられるのかな…。
私も続いてこれお願いします、と言い注文を終えた。
「…で、すんごいのってなに?」
「そう慌てないでよ!まずはね…」
あほの坂田っていう歌い手さん知ってる?
その単語に、びくりと過剰に体が揺れた。
彼女はそれを肯定と取ったのか、嬉しそうに微笑みながら話し始めた。
私はなぜか怖くて、じっと水が滴るコップを見つめ続けた。
「…でね、さっき駅でその坂田さんを見かけたの!写真も撮ったよ、じゃーん」
「……っ、」
朝見た服。朝見たバッグ。朝見た髪。
少しぶれた写真にの真ん中に映る男性は、明らかに坂田くんだった。
震えが止まらなかった。
気がついたら私はイスを倒す勢いで立ち上がり、何か一言とお金を置いて、店を出ていた。
壁に耳あり障子に目ありって、こういうこと…?
汗が噴き出す、冬の昼下がり。
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sera(プロフ) - 冬芽さん» 代表で主催の私が返信させて頂きます。読んで下さっただけでなくコメントまでありがとうございます!ぜひ気になった作者様の作品を読みにいってみてください…! (2019年4月1日 19時) (レス) id: 28f01b04a4 (このIDを非表示/違反報告)
冬芽(プロフ) - どのお話も素敵でした。楽しんでサクサクと読ませていただきました。素晴らしいコラボをありがとうございました。 (2019年4月1日 11時) (レス) id: 781e1744d9 (このIDを非表示/違反報告)
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