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【坂田】ラストを飾った10分後/sera ページ19

*



「また会おな!今日はありがとー!!」


そう言ってにこにこと笑い、手を振りながら捌けていくライブTシャツを着た赤い彼。
その光景を少し複雑な気持ちで見る。
他のメンバーも一言ずつ言葉を残し、捌けていった。

今日1番の歓声が上がると、ステージから人が捌けていきライトの明かりがすぅっと消え、開演前の状態に戻る。
すると、私の周りの人が慌ただしく動き始めた。私もそれに続いてゲストスペースを出る。

パタパタと早足で楽屋に向かうと、中には一人しかいなかった。
ガチャ、という扉の開く音に反応してぱっと振り返る彼。


「Aちゃんっ!」
「…坂田さん」


がたっ、と音を鳴らして立ち上がり抱きつこうとしてくる、先程までステージにいた坂田さん。
が、すぐに自分が汗でびしょびしょなのに気づいて、にっこりと笑うに留まった。
汗っかきさんらしい。頬もまだ汗が伝っている。


「…他のメンバーさんはどうしたんですか?」
「んー?スタッフさんの話してるんちゃうかな」
「坂田さんは、戻ってきてよかったんですか?」


そう問うと、彼は1番乗りがよかったから!と言う。
何が、なんてわかってることだからわざわざ聞かないけれど。
……私のこと、だよね。

じっと見つめると、照れたようにはよ髪元に戻してくださーい、と言った。
汗拭かないとだし、耳真っ赤なのにね。
棚にあったタオルを持ち、首を拭こうとするとさすがに自分でやる、だなんて怒られた。意味わかんない。


「……なあ、Aちゃん」
「はい?」
「どうやった、今日の俺」


────カッコよかった?

坂田さんは座ってるから、必然的に上目遣いになって、一層カッコよく、可愛く見えてしまう。
また一筋、彼の首を汗が伝った。…見ちゃいけないものを、見てるみたい。


「…まあ、」
「ははっ、なんやねんそれ」
「…だって」
「んー質問が悪かったかな。俺のこと好きになってくれた?…恋愛的な意味で」


ほら、またそうやって。少女漫画みたいな、かっこいいセリフを簡単に言っちゃうんだ。

(……私の気も知らないで、ずるい、ほんと)


「……好きですよ」


ずっと前、どこかの楽屋であなたに会ったときから。

あなたが目を見開き、抱きしめてくるまであと6秒。

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sera(プロフ) - 冬芽さん» 代表で主催の私が返信させて頂きます。読んで下さっただけでなくコメントまでありがとうございます!ぜひ気になった作者様の作品を読みにいってみてください…! (2019年4月1日 19時) (レス) id: 28f01b04a4 (このIDを非表示/違反報告)
冬芽(プロフ) - どのお話も素敵でした。楽しんでサクサクと読ませていただきました。素晴らしいコラボをありがとうございました。 (2019年4月1日 11時) (レス) id: 781e1744d9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:作者一同 x他3人 | 作者ホームページ:***  
作成日時:2019年3月15日 6時

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