【そらる】酒酔い星/こんぺいとう。 ページ1
3月の最終日、彼女に『明日楽しみにしててね』と言われてから何だかお腹が痛いのは気の所為ではない。
普段から楽しい事、面白そうな事には積極的に取り組みその為の出費は惜しまないという底意地悪い彼女がイベント事に興味がない事がありえないのだ。
4月1日には嘘をついても良いという風習がいつの間にか定着してしまっているが、正直世の中には許しを得なくても嘘を平然とつく輩が沢山いるのだが。
まぁ、今はいいとしよう。
そんな彼女が特大イベントに不参加なのは有り得ず、一生懸命今日の為だけに溜め込んだ嘘を披露できるのだから満面の笑みで言っていた。
それはもう楽しそうに、ニコニコと笑ってらっしゃった。
……おかげで全然眠れなかった。
いや、嘘。全然気にせずに寝ちゃった。
なんなら、夢も見ずにぐっすりだった。
「……、今、何時……?」
ベッド横に置いた目覚まし時計を手探りで動かすが、充電していたスマホを見るのが早いかと、電源を付ければ眩しい光に目が眩む。数回瞬きを繰り返し、暗闇に慣れた視界のなかで時刻を見れば8時を既に回っていた。
「?居ないし……、なんで真っ暗?」
雨音はしないし、隣に眠っていた彼女はおらず、少しシーツが乱れている。
疑問に思いながらもカーテンを開ければ、眩しい光が部屋の中に入り込む。
晴天。なんなら雲ひとつない良い天気だ。
「起きたら開けてって、いつも言ってんのに」
相手の居ない空間で文句を言いつつリビングに繋がる扉に向えば、彼女の啜り泣く声が聞こえた。
「……A、?」
珍しい……。
というか、泣いたことなんて見たこともなかった。
付き合い出してからほとんど彼女の笑顔に触れてきた人生だったため、彼女は泣かないものなのだと勝手に解釈していた。
そりゃあ違うよな。
彼女も人間で、か弱い女の子だ。
寝室同様閉め切ったカーテンを一度無視して、彼女の声がする方へと進む。
「っ、……」
「A、何かあった?」
キッチンの床に座り込む彼女の背中に手を置いて、顔を覗き込もうとすれば、泣き顔を見られたくないのか手で顔を隠してしまう。
そんなに弱い姿を見られるのが嫌なのか、はたまた俺が頼りないのか。
「……みないで」
「なんで?話してくれなきゃわかんないし、力になりたい」
「そらるん……」
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sera(プロフ) - 冬芽さん» 代表で主催の私が返信させて頂きます。読んで下さっただけでなくコメントまでありがとうございます!ぜひ気になった作者様の作品を読みにいってみてください…! (2019年4月1日 19時) (レス) id: 28f01b04a4 (このIDを非表示/違反報告)
冬芽(プロフ) - どのお話も素敵でした。楽しんでサクサクと読ませていただきました。素晴らしいコラボをありがとうございました。 (2019年4月1日 11時) (レス) id: 781e1744d9 (このIDを非表示/違反報告)
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