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10.少しくらいなら ページ10

俯いて歩いていると、それに比例して気分も下がっていく。こつこつと鳴る靴音を、ぼんやりする頭に響かせながら廊下を進む。

 そのせいで目の前に迫る誰かの影に気づくことができなかった。頭突きをするように勢いよくぶつかってしまう。



「うお!? 誰でござるか! ちゃんと前見て歩け……ってA氏?」



 そこにいたのはエドワード・ティーチ──通称、黒髭である。彼はずっと前に立香ちゃんが召喚した古参のサーヴァントだ。

 しかし、面と向かって話したことはない。それなのに何故わたしの名前を知っているのだろう。



「すみません、わたしの不注意で……」
「大丈夫でござるよ。が、ふむふむ……」



 呼び名の通り真っ黒な髭の生えた顎を擦りながら唸る黒髭さん。頭のてっぺんからつま先まで、まるで品定めするかのように見つめてくる。



「な、なんでしょうか?」
「いや〜、お主があのバーソロミューの秘蔵っ子なのかと驚きましてな。てっきりまたメカクレ系かと思っていたでござるが……これは一体……」
「秘蔵っ子?」
「奴がよく語っていたもんでして、おかげで拙者もA氏の名前を覚えてしまった……あ、深い意味はないから! NTRの趣味はないから! ここ大事!!」



 聞きなれない単語のなかに混じるバーソロミューさんの名前にどきりとした。

 二人は同じ海賊だ。よく話すということはきっと仲がいいに違いない。だが、どうしてそこにわたしの話題が上がるのだろう。


 ──彼はわたしのことをなんて言っていましたか?


 そう聞こうとして、やめた。たとえそれがどんな事実だろうと、わたしの気持ちは変わらない。

 我ながら往生際が悪いと思う。でも、どうしても諦めきれないのだ。

 この人なら、バーソロミューさんの好みのメカクレ系について、わたしよりも詳しく知っているかもしれない。



「黒髭さんに、ひとつお願いしてもいいですか?」



 傷ついても構わない。決心はもうできている。だから、少しくらい望みをかけたっていいじゃないか。

11.嫉妬→←09.疑問



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設定タグ:FGO , バーソロミュー , Fate   
作品ジャンル:恋愛
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星良(プロフ) - 爆死★さん» ありがとうございますッ!!!!! (2020年11月14日 19時) (レス) id: ca2b877203 (このIDを非表示/違反報告)
爆死★ - スッッッキ!!!!(スッッッキ!!!!) (2020年11月10日 17時) (レス) id: da8da72c3c (このIDを非表示/違反報告)
星良(プロフ) - 王のお話さん» ありがとうございます!そう言ってもらえて嬉しいです!初めてのコメントで感動しました……貴方のそのお言葉がとても励みになります、本当にありがとうございます!!(ただいま新作を準備しております。お楽しみに!) (2019年8月23日 11時) (レス) id: fa3e8c95cc (このIDを非表示/違反報告)
王のお話 - 突然のコメント失礼します。率直に言いますととても感動しました!最初から最後まで話にとても夢中になりました!小説を読んでこんなに気持ちが昂ぶったのは久々で、とても楽しかったです!もし別作品を書く予定がありましたら是非読ませてください! (2019年8月23日 2時) (レス) id: d7d108a59e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:星良 | 作成日時:2019年8月13日 13時

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