ある日の午後 ページ1
夕食が終わり、兵士たちがそれぞれ部屋に戻っても食堂に響く声の勢いが衰えることはなかった。夕食の洗い物を終えたAがそっと食堂の中を覗くと、数時間前と同じ光景が目の前に広がっていて思わず苦笑してしまう。
もうそろそろカップの中身は空になっているだろうと思い、新しく入れた紅茶を手にAは足を進めた。
頬を紅潮させ体全体で巨人の魅力について語るハンジに対し、リヴァイは椅子に座ったまま無表情でそれを聞いている。その眉間のしわが先ほどより深くなっている気がするのは気のせいではないだろう。
紅茶を勧めると、リヴァイはその顔のまま小さく頷く。
差し出されたカップに紅茶を注ぎ終わるとAはハンジのカップに視線を移した。話をすることに夢中になりすぎているようでその中身は先ほどと全く量は変わっていない。そのまま自分のカップに紅茶を注ぐと、Aはハンジの正面の椅子を引くと静かにそこに座った。
「……おいハンジ」
リヴァイのこの言葉と声を聞いたのはもう何度目だろうか。
だが、彼の呼びかけに答える返事は今まで一度も聞いたことがない。ハンジは自分の世界に入ってしまったらほかの声が頭に入ってこないのだろう。
ただ、自分の考えをずっと数時間も語っている。相手が聞いていようが聞いていまいが関係ないのかもしれない。
現にAが席を立ってもハンジは全く気がついていないのだ。Aはそっとリヴァイを盗み見る。いつもなら彼女の語りに付き合わずさっさと一番に席を経つのに今日は根気よく席を立つことがない。何か放っておくことができない理由でもあるのではないかと思う。
「だからさ、エレンをのことを私は隅々まで調べたいわけ!?言葉のごとく、隅々まで!ああ……もう素っ裸にして一晩中研究したい。今から部屋に行っちゃおうかな……いいかな……いいよね?夜這いくらい許してもらえるよね?」
「……ハンジ」
「もし巨大化しちゃっても大丈夫!私が研究した麻酔薬使ってみるから!ふふふ……これ使いたくて仕方なかったんだよな。一度、モブリットで試そうかと思ったんだけどあいつ、そういうとこ感がいいから気づかれちゃってさ。だ、大丈夫……ちょっとチクってするだけだから……」
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朝 - 面白かったです。文才凄いですね!これからも頑張って下さい!楽しみにしてます✨ (2022年8月2日 17時) (レス) @page1 id: 451b7a35bd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マキノ | 作成日時:2022年6月13日 15時