名も無い関係【進撃の巨人】 (ページ7)

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Episode 06 ページ7

開いた口が塞がらない。その言葉はこういう時に使うのだと身をもってハンジは知ることになった。

今の自分はその言葉の通り、口開けたまま呆然としている。何か言おうと思うのだが、呆れすぎて言葉が出てこないのだ。

「おい。なに間抜けズラしてやがる。人の話聞いてんのか？」

人に相談しておいてこの高慢な態度はどうかと思うが、そう反論すれば舌打ちをしてここから出ていくのは目に見えている。リヴァイがハンジの部屋を訪れたのはハンジが夢の世界にいる時間帯、つまりは真夜中だった。

控えめにノックするとかならばまだ可愛い。こともあろうか開けなければ扉をブチ破るというような勢いでこの男はドアを力いっぱい叩いてきたのだ。

仮にも女の部屋だというのにズカズカと人を押しのけて入ってきたかと思えば、ドサリと人のベッドに座り、現在に至る。

「……聞いてるよ。言葉を失ってるだけ」

自分の意場所をとられたハンジは、テーブルの椅子にもたれ掛かりながらわざと大きなため息を落とした。

「まさか人類最強がこんな馬鹿だったとはね。あなたに憧れてる子達が見たら泣くよ」

「うるせえな」

「好きな子傷つけて、どうしていいかわからなくて私に相談してくるなんて泣けてくるね」

「勝手に脚色すんな。削がれてえのか」

「脚色してないでしょ。A傷つけてどうしていいのか分かんなくてここに来たくせに」

反論がないところをみると図星のようだ。小さく舌打ちをして、苛立ちを向ける場所をなくしたリヴァイは、自分の髪をぐしゃぐしゃとかきあげる。その表情はいつもより険しく、まるで巨人を前にした時の表情だった。

彼がイラついているのはAに対してではない。自分自身に対してだろう。

「ほんと不器用なんだから。遠まわしのいい方じゃ伝わらないよ」

「別に伝えるつもりなんてねえ」

「じゃあこのままでいいの？」

リヴァイはふてくされた子供のように視線を逸らす。これで自分より年上というのだから困ったもんだとハンジは内心呆れてしまう。

大体、なんでわざわざ自分の想い人の恋愛の相談を受けないといけないのだろうか。

それでも、ほっとけない自分は本当にお人好しで。そして、悔しいけど本当に彼と彼女が好きなんだと思う。