Episode 02 ページ3
風にタオルが揺れる。今日は天気がいいから、フカフカに仕上がるだろう。
「したら最後。私の意思関係なく結婚だの子供だのって話が進むんじゃないかな?」
「それは……」
「母は調査兵団をやめてほしいって思ってるからね」
ここに居ると結婚なんて無縁に思っていたが、自分もしてもおかしくない年なのは確かだ。女は結婚して世界のために子供を産んで育てるべきなのかもしれない。
だがそれも、全部終わってからだとAは思う。
それはまだ自分がすべきことではない。
「あの……変なこと聞いてもいいですか?」
「ん?」
「その……兵長とAさんは……恋人…なのでしょうか?」
Aは動きを止めて、大きな目を見開きエレンの顔を凝視する。
その表情に聞いてはいけないことだったと思ったのだろう。エレンは慌てて手を振った。
「変なこと聞いてすみません!」
「……エレンにはそんな風に見える?」
「あ……えっと、その……」
「残念ながらご期待には添えないなあ。私は調査兵団の一人の兵士で兵長は人類の希望だよ?どう考えても釣り合わないし、兵長のここは人類のものだよ」
トンッとAがエレンの心臓を指す。
「ほら。早く干さないとその兵長に遅いって怒られるよ」
シーツを手にとって、まるで空に投げるようにして広げる。そんなAの横顔を見ながら、エレンは複雑な思いを抱いていた。
彼女の今の言い方はなんだか自分に向けられたものじゃない気がしたのだ。
まるで、A自身に言い聞かせてるような言い方にも聞こえる。
エレンがふたりの関係が特別じゃないかと思ったのには理由があった。二人は特に仲がいいわけではない。
だが、リヴァイのことを話すAはガラリと雰囲気が変わる。敬愛や尊敬と言われればそうかもしれないが、それとは違う何かがある気がしたのだ。
エレンはその雰囲気を知らないわけではない。
母が父の話をするときに似ていて、だからそう思ったのだった。
「ほら。手が止まってるよ」
「……すいません」
それ以上、詮索をしてはいけない気がして、エレンは次の洗濯物を手に取り、空に向けて大きく広げた。
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作者名:マキノ | 作成日時:2021年10月26日 17時