Episode 01 ページ2
「Aさん。手紙が届いてましたよ」
「あ、ありがとう。お母さんかな?」
エレンが持ってきた手紙の裏面を見ると、やはり母からのものだった。調査兵団に入ってから、母は以前より頻繁に手紙を送ってくるようになった。
母の気持ちはわかる。憲兵団に入ると言っていた娘がいきなり死と隣り合わせの調査兵団に入ったのだ。
この手紙は言えば生存確認のようなものでもある。
女手一つで育ててくれた母親に親不孝だというのは分かっている。それでも、調査兵団に入ると決めたことは間違ってなかったと今は胸を張って言える。
3枚にわたっている手紙を読み進めているうちに、少し気持ちが重たくなった。1枚目はこちらを気遣うような内容。2枚目はあちらの近況と前回の手紙に対する返事。
しかし3枚目はAにとってあまりいい内容ではなかった。
「……一旦戻ってこいだって」
「え?」
横で洗濯物を干し始めたエレンが小さく首を傾げる。
「見合いしろ…だって」
「見合い!?」
「前からずっと言ってる。憲兵団にいい人がいるから一度会ってみろだって」
最初に断りの手紙を書いたのは2回前…3回前だったか。
何度もそのつもりはない、会うつもりもないから断って欲しいと言ってるのに、母は諦めてくれない。
よいしょっと言って、立ち上がるとポケットにAは手紙を押し込んだ。
何度言われても気持ちは変わることはない。
例えばそれが背が高くて男前でとっても優しくて、非のつけようのない人だったとしても、自分の気持ちが揺れることはないのだ。
「手伝うよ」
「あ、ありがとうございます」
エレンの横に並んで、ちょっと背伸びをしてタオルをかける。
隣でエレンがなにか聞きたそうな顔をしていて、Aは素直だなと思うと笑いがこみ上げてきた。
「何?顔に出てるよ」
「あ!えっと……その……」
くすくすと笑いながら問いかけると、おずおずとエレンは聞きたかったことを口にする。
「その……お見合い、するんですか?」
「しないよ、そんなの」
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作者名:マキノ | 作成日時:2021年10月26日 17時