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「あれ、知念も来ていたのかい?」

「ああ、伊野ちゃん……それはこちらの台詞じゃないかい?」

「たまには外で年を越すのも悪くないと思ったからね。それに今回はAちゃんのことも気掛かりだったし……」



なるほどね、と知念さんはゆっくりと立ち上がる。
いつもに増して煌びやかな装飾がゆらりと揺れた。



「Aちゃん、裕翔は店の並びの方に居るはずだよ。案内できないのは申し訳ないけれど」

「……知念さんは行かないんですか?」

「ああいう煌びやかな場所は、あまり好きじゃなくてね」

「え……?」




意外な言葉に思わず聞き返してしまう。
けれど考えてみれば、いつも静かに優雅に笑う仕草ばかりが思い出されてすぐに納得できてしまった。




「あっ…えっと……私、裕翔くん探してみます…!」

「Aちゃん、あまり遠くに行ってはいけないよ?」

「うん。伊野ちゃんたちはここに居る?」

「そうしようかな?年越し前になったら、『茜』の舞台の方へ向かうけれど……」

「分かった。なら私もそうするね!行ってきます」

「気を付けてね」




伊野ちゃんの声を背に、私は夜店の並びへと進んでいく。
たくさんの人で賑わっているそこは、まるで今までの出来事が全部夢だったかのようで。
けれどその通りを真っ直ぐ進んで、導かれるように足を止める。




「……裕翔くん」




私の声に、見慣れた後ろ姿は振り返る。



「Aちゃん!良かった、年越しに間に合ったんだね」

「ついさっき到着したところなの。裕翔くんは?」

「本当はもう少し後で来る予定だったんだけど、待ちきれなくて早く来ちゃった。知念には会った?」

「うん。あんまりこういうところが好きじゃないって言ってたけど…?」

「あはは、そっかあ。ちょっと悪いことしちゃったな」




あやかしにも好き嫌いはもちろんあって。
何もしなくても生きていけるから、好きと嫌いには忠実。
嫌いなものに手を付けなくても、その命が消えることはない。




だけど人間はそうはいかない。
いくら苦手でも、嫌いでも、しなくちゃいけないことがある。
逃げられないことがある。




理不尽に耐えなければならないこともある。
そして、逆らえない運命がある。



年が明けるまであと少し。


そして裕翔くんの『時間』も、もうすぐそこまで差し迫っていた。

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作者名:天凪 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2021年5月2日 23時

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