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ページ49

「……A?」

「……え、」



急に名前を呼ばれてハッとする。
目を開くと目の前には神社の本殿。



「長いお願いごとだったみたいだけど?」

「え、何?私……」



目を閉じてお願いごとをしたまま寝ていた…?
いやいや、あり得ない!
どうしてそんな状況に…!?



「ちょっとちょっと、どうしちゃったの!?勉強のしすぎ!?」

「いや、そんな事はないはずなんだよ?」



友人の冷やかしに頭を捻る。
何か忘れちゃいけないようなことがあった気がして。




「合格祈願も済んだことだし、帰ろっか」

「うん、そうだね。もう暗くなってきちゃったし」

「ね、本当に日が暮れるの早くなっちゃってさ」

「もう冬だもんね……って、あれ?」




時間を確認しようとして電源を入れたスマホが何故か反応しない。
おかしいな、寒さで変になっちゃった?



「……どうしよう、壊れちゃったのかな?」

「えー?電源自体が切れちゃってるんじゃない?」

「こういう時は再起動…?」



電源ボタンを長押しすると、何故かバッテリーのマークと共に『充電してください』の文字。




「え、充電切れ!?」

「そろそろ買い替え時なんじゃない?」

「まだ買って半年だよ?それに今朝充電はしてきたのに……」

「何だろう?とりあえず帰って充電してみたら?」

「うーん、そうだね。とりあえずそうしてみようかな」




神社の石段を下りて、友人と別れる。
薄暗い道を二、三歩進んだとき。




「にゃあ」



真っ白い猫が神社の方へと走っていく。




その瞬間、今まで忘れていた記憶が溢れて一気に頭の中を駆け巡る。
頭の中にあの優しい声が響いて、そう感じた途端に泣き出しそうになってしまって。



オッドアイの白い猫は私の足元を通り過ぎて神社の石段を登っていく。



私は一度だけ立ち止まって振り返る。
そこには石段の上からこちらを見つめる左右で色の違う瞳があった。




「私は大丈夫だよ、浅葱。伊野ちゃんによろしくね」




猫はただ黙って私に背を向ける。
そうしてただ真っ直ぐに神社の石段を登り、やがて姿は見えなくなった。



猫を見送ったあと、私はまた真っ直ぐに前を向いて歩いて行く。
目には見えないけれど、きっと『彼ら』は近くに居る。
そう思えるだけで十分だった。




きっとあの白い猫は、優しいご主人さまの温かい手でその頭を撫でられるのだろう。



冬なのに、何故か温かいような気がした。





─終

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作者名:天凪 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2021年5月2日 23時

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