・ ページ43
「そうさ。数百年ぶりの『百鬼夜行』だね」
「本当に？まさか、またあの大行進をこの時代にすることになるなんて……」
「伊野ちゃん、『百鬼夜行』って……？」
「そうか、裕翔は知らないね。あやかしたちが集って行進をするのさ。たくさんのあやかしが集うところにはたくさんの妖力が集まるからね」
「……それで、どうなるの？」
「俺だけの妖力では裕翔の身体は不安定なままだからね。たくさんの妖力が集まってこそ『本物』になれる……まあ、難しく考えなくていいんだよ」
クスリ、と謎めいた笑み。
どこか妖しさのあるそれは、彼があやかしであることを再認識させる。
「妖力が体に馴染みさえすれば、もう裕翔は俺に苦しめられることはなくなる……自分勝手な罪滅ぼしにも聞こえるかもしれないけれど、今だけは堪えてくれるかい？」
「罪滅ぼしって……そんなの」
「この大行進が成功すれば、裕翔は今度こそ自由の身さ。もう何にも縛られずに済む。そうなれば、今まで我慢していたことももう我慢しなくていいんだよ」
「伊野ちゃん、それは違うよ。俺は何も我慢なんて、」
「そうと決まれば早く知らせなきゃね。高木、蓮華街中に結界を張るのを手伝ってくれるかい？」
「もちろん。柊華一門の皆にも知らせる？」
「そうだね、頼もうか。そうしたら知念、裕翔の着替えは任せたよ」
「任せておいて。さあ裕翔、こっちへ」
「えっ……」
知念さんに手を引かれるまま、裕翔くんは部屋を後にする。
何かを訴えている、そんな名残惜しい瞳。
そしてその目に気づいているはずなのに、目を逸らしてしまう伊野ちゃん。
彼の言った『自由』が、何だかとても空虚な意味に聞こえてしまって。
お節介だと分かっていながらも、私は何も口に出すことは出来なかった。
・
・
それから着々と準備は進んで。
何も分からない私は、何故か伊野ちゃんに言われるがまま、制服と通学鞄を身に着けていた。
元の世界の制服なんかで外に出たら怪しまれるよ。
私がそう言うと、伊野ちゃんは笑って大丈夫だよと言った。
「そろそろ裕翔たちも準備が出来る頃だね」
「うん。それにしても、どうして急にこんなことを言い出したの？」
「ふふ、高木までそれを疑うのかい？」
「厄介な術とはいえ、『共属の術』は二人が近くに居れば問題は無いはずなのに……」
「……高木はつくづく優しいんだね」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 79人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
