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ページ21

「……裕翔?」

「ごめん、伊野ちゃん。あまりにも突然で……その、ちょっと驚いてるんだ」

「ふふ、それは驚いて当然さ。俺だって突然だったから」



隣、いいかい?
その問いに頷けば伊野ちゃんはそっと隣に座る。




「実はあの後、悪い妖気を感じてね。それですぐに戻ったんだ。」

「悪い妖気……って?」

「ああ、何て説明すればいいか……でも大丈夫。裕翔のことは、俺が守るからね」




どくん、と心臓の跳ねる音が聞こえた気がした。
ずっと欲しくて欲しくてたまらなかった言葉。
あの日からずっと、ずっとこの時を待っていた。


動揺に揺れる瞳に、伊野ちゃんの影が映り込む。




「……俺、ずっと寂しくて……気づいていたけど、やまにも知念にも言ったことがないんだ」

「それも全部、俺が寂しい思いをさせていたからね……二人にも申し訳ないことをしたと思っているよ」

「二人ともすごく優しいんだ。でも、優しすぎるくらいだから、何だか遠慮してしまって」

「……困らせてしまうような話も、二人なら笑って受け入れてくれるから?」

「あはは、伊野ちゃんには何でもお見通しなんだね」

「ふふ、こう見えても小さい頃の裕翔はとても素直で分かりやすい子だったからね」




幼い頃に過ごした断片的な思い出が少しずつ繋がり始める。
あの頃と一切見た目の変わらない、俺の大切な『家族』が笑う。
雨は依然として強さを増しているけれど、それも怖くなくなった。





「二人と一緒にいるのもとても楽しいんだ。だけど、俺はやっぱり『たまゆら亭』に帰りたい」

「……本当に、いいのかい?」

「え?」

「俺も、あの日からずっと裕翔のことを忘れられなかった。けれど、俺には近くに居る資格がないのさ」

「そんなの、俺は何も…!」

「けれど、近くに居るためには少し危険が付きまとう。それが裕翔を苦しめることだってある」

「平気だよ……何も怖くない…」

「裕翔が良くても俺が良くないのさ。だから、今から少しばかり術をかけても構わないかい?」

「術?それって、なんの?」

「おまじないみたいなものさ。どんな悪いものからも裕翔を守ってくれる、強力なおまじない」




ね、と差し出された手。
この手を取れば、漠然とした孤独から解放される。
緊張なのか、僅かな恐怖なのか、震える手をそっと差し出して、伊野ちゃんの手を取った。




「うん。いい子だね」

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作者名:天凪 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2021年5月2日 23時

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