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うん、と頷いて考え込んでしまう。
何が本当で、何が嘘なのか。
自分で理解できているつもりで、全く理解できていなくて。
「ううん……ごめんね。何だか元の場所にはもう戻れないんじゃないかって、そんな気持ちになったの」
「……俺も、何にも保証できないけど、それは違うんじゃないかなって思うよ」
「あ、ごめん……そういうことが言いたかったんじゃないんだ。こっちに来て色んな人に出会って、毎日がね、本当に楽しいんだ」
「それは嬉しいよ」
「ふふ。だから、こっちが本当なんじゃないかって思えちゃってね。難しいけどさ」
どっちも現実で、どっちにも私がいて。
そして皆がいる。
だけど、私は一人だけだ。
選ぶことが出来るのなら、私はどっちを選べばいいんだろう。
どちらかを選んだら、どちらかは捨てなければいけないのだろうか。
その選択を、いつかは迫られるのだろうか。
考えるのが怖くて。
そういう可能性があることは分かっているのに。
それを考えないように、可能性を打ち消して。
私は、一体どこに存在すればいいのだろう。
「Aちゃん」
「ん？」
「不安だろうけど、何かあったらいつでも俺を頼ってほしい」
「……！」
一際強く名前を呼ばれて、咄嗟に彼の方を見れば、ぎゅっと手を包み込まれる。
冷えた手が、ゆっくりと溶かされていく。
そんな感覚に陥って、
「Aちゃんには、居場所がある」
『裕翔には、居場所がある』
「え……？」
裕翔くんの声に重なるように、聞こえたもう一つの声。
握られた手から伝わる温もり。
確認なんてしなくても、それが何なのか分かる。
「……伊野ちゃんも、同じ気持ちだったんだ…」
不意をついて口から零れた言葉。
その瞬間、するりと繋がれた手が解ける。
まるで魔法が解けてしまったかのように、賑やかな喧騒が遠くに聞こえる。
「……」
「え？裕翔くん…？」
ぼんやりとした瞳。
その瞳が私を映していないことは明確だった。
「ねえ、どうしたの？」
「……っ」
誰かに言わなきゃ……
そう思って立ち上がった瞬間、私の腕を裕翔くんが掴んだ。
突然で驚いた私に裕翔くんが顔を上げる。
そして、
「えっ！？」
突然、裕翔くんの両目から大粒の涙が零れ落ちる。
それは止まらない雨のように、頬を伝って地面へと吸い込まれる。
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