＊この世で最も美しく、哀しくない話part６＊ (ページ7)

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玄関の引き戸は今日も相変わらず軋んで大きな音をたてる。

白い月がほのかに照らす薄暗い玄関の土間から

冬の冷たさがじんわりと響いてくる。

２人並んでここに立つのは久しぶりで、和也がいなかった日々を思い出すと

ああ。私は、寂しかったんだ。と気付いた。

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寂しかった。と気付くともっと寂しくなって。

ああ。だけど今、和也が横にいる、と思うと

幸せで、嬉しくて、泣きたくなった。

こんな気持ちを、また自分が抱えていることにも

幸せで、嬉しくて、泣きたくなった。

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ああ、私。

ずっとずっと、和也に会いたかったんだ。

私。

ずっとずっと、和也に会いたかった。

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２人で台所に並んで野菜を切る。

和「何鍋にする？」

A「肉ないよ」

和「魚は？」

A「ないよ」

和「豆腐は？」

A「あるよ」

和「･･････それもう、湯豆腐じゃん・笑」

和也が笑い、私も「だね」と笑った。

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古い家は温まるのも時間がかかる。

それでも、この台所は暖かい。

鍋の湯気。

和也が大きく切りすぎた白菜。

私が入れすぎた春菊。

ポン酢にするか、ごまだれにするか、冷蔵庫の前で揉める私達。

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カセットコンロに火をつける。

お世辞にも片付いているとはいえない机の片隅で、私達はいただきます。と

手を合わせた。

熱々の湯豆腐を口に入れると、熱くて涙が出た。

熱い口内に入ってきた和也の舌も、熱かった。

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会いたかった。

和也に、会いたかった。

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和「また泣いた・笑」

和也が笑い、ぐしゃぐしゃと私の前髪を触る。