＊この世で最も美しく、哀しくない話part６＊ (ページ2)

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智「君にね？興味を持ったんだよ」

大野さんは微笑んだまま言葉を紡いでいく。

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智「チヅルは欲しいものの為ならなんでもやるからね？相手の女も気の毒に、って

思いはしたけど･･･すぐに忘れたんだよ」

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忘れようとしていたチヅルさんの言葉の棘が、

大野さんの触れた頬からまた深く、深く、刺した気がした。

忘れようとしていた雅紀の笑顔も、

夜の闇の中でぼんやりと浮かんで、パチン。と、敗れた。

飛ばないと知りながら、それでも愛おしいと空気を入れた紙風船。

あの夜が、身体を突き抜ける。心を突き抜ける。

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智「だから。チヅルのダンナが結局、その女を忘れられなくて。

その女が男をチヅルから取り返した･･･って聞いた時にね？チヅルを敵に回す女、ってとこに

興味を惹かれたんだ」

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大野さんは淡々とそれだけを言う。

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声はもう、震えなかった。

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A「･･･とったとか、とられたとか･･････雅紀は、物じゃない」

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目の前の人が怖い。怖いけれど、怒りが勝った。

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言葉にすると、なんて簡単な、下世話な話なんだろう。

でも私は知っている。

私のぐしゃぐしゃに潰れた心。慟哭。切り刻まれる痛み。熱さ。

それら全てをきっと。同じように抱えた雅紀も。

知っている。

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大野さんは少し瞳を開いて、驚いた顔をした。

そしてまた、微笑む。

智「弱いんだか、強いんだか･･･その分からない所が面白いのかなぁ？」

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智「どんな女なんだろ、って思ってたら」

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智「チヅルは怒りに任せて君のことを喋りつくした。その君が、すぐそばに、いた」

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大野さんが首を横に傾ける。

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智「知りたいな、って思ってね？」

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智「絶望から這い出た君の強さを見てみたい。

そして」

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智「もう一度、絶望に歪む顔が見てみたい」