＊この世で最も美しく、哀しくない話part６＊ (ページ25)

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肌を重ねた翌朝は、冬の匂いがした。

カン、キキーー･･･という音が外で聞こえた。

あれは、新聞配達のおじさんがうちの古くて開けるたびに音が出るポストに

朝刊を入れて、自転車でＵターンした音。

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春や夏とは違って、生き物の鳴き声はしない。

だけど凍った匂いが、微かな物音が、ああ。世界は綺麗だ、と私に教えてくれる。

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腕で私の頭を抱えるように寝ていた和也が、目を瞑ったまま「冬の匂いがする」と小さく言った。

A「起きてたの？」

和「ん･･･今、目ぇ覚めた」

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まだ目を瞑ったままの和也は、綺麗。

すべすべの肌。

長い睫毛。

少し眉を顰めた寝顔。

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和「････喉渇いたな。A、水飲む？」

和也がゆっくりと私の首下から腕を抜く。

A「うん」

和「ん。････布団から出るとさみぃな」

和也が、私を冷気に当てないように･･･ゆっくりと布団から身体を滑られて出ていく･･････。

まだ暗い部屋の中でも。和也が裸だということは分かる。

ドキドキした。

心臓がバクバク鳴る音が和也に聞こえちゃうんじゃないかと思うくらい、ドキドキする。

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和「なにお前。照れてんの？笑」

和也が座ったまま笑う。

あ、意地悪な顔してる。

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A「照れてねぇし！」

ハハ、と笑いながら和也が私の髪をぐしゃぐしゃと撫でた。

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その指の体温が、愛おしい。

和也がスタスタと台所へ歩いて行く後ろ姿は、恥かしくて見れなかった。

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しばらくするとトン、と枕元にコップを置いた音。

和「飲んだら？」

和也の声にチラ、と和也を見上げると････まだ裸のままかい！裸で台所まで行ってたんかい！

そうツッコみたい気持ちは、和也を好き、と思う気持ちにシュワシュワと

甘く、甘く、溶けていく。

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和也が畳の上に胡坐をかいて座り、カチ。とタバコに火を点ける。

そしてふぅ・と煙を吐き出した後、ニヤリと笑った。

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和「水飲みたいんだろ？ささ、出てこい。裸体で出てこい」

･･････その意地悪そうな顔！やっぱり腐れ外道だ。

真っ裸で胡坐をかいてタバコを吸う腐れ外道だ。

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･････そんなあんたの全部が、好きだよ。チクショウ。