＊この世で最も美しく、哀しくない話part６＊ (ページ11)

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和也が薄いマフラーを首に巻いて玄関を開けた。

ガラガラという音と、冬の朝の匂い。

一度マンションに戻って仕事に行くわ。和也がそう言って出掛けるのを

「うん」と私は答えた。

妖怪ケツ掻きは何時から仕事？と聞かれて

「今日は１１時から」と答えた。

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私はまだスッピンのボサボサで、寒い玄関に立つのにはいた靴下は

遠赤外線がどうのこうの、のお婆ちゃんがはいていそうな靴下で、

きっと後頭部は寝癖でグシャグシャだ。

その私に和也が笑う。

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和「なんでそんな顔すんの」

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和也の指が私の頬を撫でる。

和「寂しい？」

ニヤリ、と私を見る和也に、ちくしょう。と思いながらも「寂しい」と答えた。

和「正直だな・笑」

和也のその平然とした顔がなんだか悔しくて、それでも愛おしくて、

鼻の奥がツンとした。

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和「････いってらっしゃいのチュウは？」

和也が悪戯っ子みたいに笑う。

･････くそぅ。

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チュ、と和也のホッペにキスしようとする自分が恥ずかしいけれど

私に頬を出していた和也がいきなり顔の向きを変えたので

触れた唇に。

恥ずかしさはあっという間に蕩けて消えていく。

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チュ･･･と漏れる水音は、朝の空気の中でひどく違和感があるのに

それすら心地いい。

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和「･････あーー･･･やべぇ、今日仕事休もかな･･･」

和也が私をぎゅう・と抱き締める。

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フワリとくっつく和也の柔らかい髪。

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和「二宮さんちの和也くんが結構限界なんですけど」

A「････下ネタ････」

私が和也を小さく睨んで笑うと、和也も笑った。

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和「お前、あれだな」

A「なぁに？」

ああ、耳元で囁かれる声が心地いい。気持ちいい。

和也の胸の鼓動を聞きながら、私は幸せで蕩けそう。

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和「ゲゲゲが女房だな」

A「それ、嫁が妖怪じゃねーか！」

蕩けるように甘いけど。

やっぱり腐れ外道は外道で。

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でもいいや。私は今、妖怪になっても幸せだもん。