＊この世で最も美しく、哀しくない話part５＊ (ページ7)

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翔「ああ･････」

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お風呂あがりの翔くんは、私が渡した冷たいお茶をグイ！と一気に飲み干した後

居心地悪そうに部屋をキョロキョロした。

翔「･･･結局泊まることになっちゃってゴメン･･･」

お風呂で酔いが少し覚めたのか、礼儀正しい翔くんが顔を出す。

和也のＴシャツとハーフパンツを借りた翔くんは申し訳なさそうに

座布団に座ってる。

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A「アハハ、全然いいよーーー。布団がカビ臭いかもしれないけど」

和「櫻井くんは俺と一緒の布団で寝るもんね～？」

翔「ぜってーーーヤダ！」

和「何もしないって！」

翔「その発言がヤダ！」

和「普通のくせに」

翔「････弁護士じゃなかったらお前、殴ってるからな･･･」

和「ハハ・笑」

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和也が笑いながらお風呂場に歩いて行くのを見送る翔くんは

Ｔシャツ姿だからか、随分幼く見えた。

A「翔くんのＴシャツ姿ってなんか新鮮だね」

翔「そ？････まぁ襟ついたシャツの方が多いかもな」

A「そうだよ。本屋でバイトしてる時もいつもシャツ姿だった気がする」

翔「そうだっけ？」

A「しっかり者のイメージ･･･かな？」

私がそう言うと、翔くんはハハ、と笑った。

まだ少し湿った髪が電気に照らされ黒く光ってる。

翔「俺より二宮くんの方がしっかりしてるだろ」

A「和也が？」

思わず聞き返したけれど、翔くんはそれ以上は何も言わなかった。

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チリリン、とまた鳴る風鈴の音。

ウィン･･･と響き出す冷蔵庫の音。

翔くんは「いいなー一軒家････なんか落ち着く」小さく笑った。

A「古いけどね」

翔「あったかいんだな、木の家って」

翔くんがシミだらけの天井を見上げ、柱を撫でた。

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翔「俺、実家も鉄骨だし、今のマンションもコンクリ丸出しでさ。

仕事で疲れ果てて帰ってきたらなんていうの？冷たいんだよ、部屋が・笑」

翔くんが笑顔のまま、ゆっくり、息を止めた。

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翔「辛い時に････この家に住みだしたAの気持ち。･･･なんか分かる」

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それだけ言って翔くんはまた普通に話し出す。

私はウンウン、と聞きながら。

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そうなの。

古くて、ボロボロで、すきま風もピューピュー入るこの家はね

あたたかいんだよ。

この家と和也がね、私を今、どうにか笑顔にさせてくれたんだと思う。