＊この世で最も美しく、哀しくない話part５＊ (ページ6)

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和「翔くん、結構酔ってるね。帰れる？」

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言いたいことだけ言って、和也はサラリと話を変える。

和「泊まってったら？」

A「･･･あ、そうだよ。泊まっていきなよ」

私も、さっきの和也の台詞なんか日常のなんでもない１コマだって顔をして

翔くんに笑う。

翔「･･･え！？いや、いいよ。悪いよ」

翔くんが慌てて手を振る。

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翔くんはいつもそうだ。

きっと、私の動揺に気付いてる。その大きな瞳で、私のカラ笑いに気付いてる。

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和「一緒に風呂入ろうぜ、イケメン☆」

翔「ヤダよ！」

和「見ーーーせーーーろーーーよーーー！」

翔「おかしいだろ、その発言！」

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ギャーギャー騒ぎ出した和也と翔くんを、スルメの袋を開けながら見て笑う。

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この、翔くんと私と。

私経由で翔くんが話すようになった男友達の絵は。

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どこかで見たな、と思う。

･･････どこかだなんて、分かっているけど。

大学時代、雅紀と翔くんが出会った時もこんな感じだった。

友達だ、と紹介しあった私に、翔くんはコッソリと笑って言った。

「A、相葉くんに惚れてるだろ・笑」

私は自分の気持ちに気付いていたのに、そのことに気付かないフリをしていたから

翔くんの言葉になんだか泣きそうになったのを覚えている。

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どうしてだろう。

今、あの頃のことを思い出すのは、どうしてだろう。

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和也は私のことを見もしなかった。

ただ翔くんにチョッカイをかけて、翔くんが入ったお風呂を覗いて、

和「･････普通････」

と呟いて、翔くんにお湯をかけられてビショビショになって笑ってた。

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前髪から零れる雫を拭くこともなく、ふざけたことだけを言って笑うこの声が

この家から消えていくのだ。

拭いても拭いても涙が溢れたあの夜を、一緒に過ごしたこの男が

この家から消えていくのだ。

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それは当たり前のことなんだ。きっと。････きっと。