＊この世で最も美しく、哀しくない話part５＊ (ページ21)

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その大野さんの言葉に。

和也はニヤリと笑っただけだった。

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そしてそのまま、私の身体の向きをクルリ。と家の方向に向ける。

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背中に、大野さんの「Aちゃん、おやすみ」という声が聞こえて

私は少し振り返って「おやすみなさい」と頭を下げた。

その私を和也がグイ、とまた前を向ける。

大野さんはふんわりと笑いながら手を振っていた。

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和「･･････お前さぁ、まさか大野くんがお前に惚れたとでも思ってねぇよなぁ？」

和也がスタスタと歩きながら、私を見もせずに言う。

A「思ってないよ！」

和「あの男、性格絶対悪いぞ」

A「いい人じゃん」

和「悪いに決まってんだろ～、お前を飯に誘うなんてアレだよ。

いつもはフレンチ喰ってるからたまにはコンビニ弁当喰ってみっか、ってとこだよ」

A「人を勝手にコンビニ弁当にすんなや！」

和「たまにはゲテモノ食ってみたい的な･･･」

A「ゲテモノて！」

和「夢見がちなアホは好きだろ、イケメンで社会的地位もあってそんな素敵な彼が

こんな私を好き･･･なの･･･？みたいなアホストーリーが」

A「･････まぁ女の子は憧れるストーリー･･･かな」

和「ハイ、アホ～～～」

A「うるさいな！」

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和也が「あ、ヤベ。タバコ切れてるんだった。コンビニ寄っていい？」まるで

一緒に住んでいた時みたいに。

普通に。久しぶりに会った、久しぶりにコイツの毒を聞いたって思ってる私になんか

気づきもしないで。スタスタと歩きながら笑ってる。

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ウィン･･･とコンビニの自動ドアが開いて、賑やかな音が店内に響く。

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和「イケメンで素敵な男でお前にチョッカイかけていいのは

俺だけですぅ～～」

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レジに歩いて行く和也のそんな言葉に。

震えた心臓なんて絶対にバレたくないから、私はグシャグシャになった髪の毛を

ガラスに映して必死に直すフリをする。