＊この世で最も美しく、哀しくない話part５＊ (ページ19)

今日:12 hit、昨日:7 hit、合計:985,939 hit

１１９ページ19

和「荷物運びたくてさ」

和也が小さく笑う。

・

・

ピ。と電話を切った。

私も耳元に当てた電話を下ろしながら「そっか」と笑う。

残していった荷物もなくなるという当たり前のことが

どうしてこんなに苦しいんだろう。

さっきまでの嬉しい気持ちがシュワシュワと萎んでいく。

・

・

濡れた心が秋風に吹かれて冷たい。

・

・

和「･･････お前、さっき俺が言ったこと、聞いてた？」

A「さっき？」

和「･････どうしよう、俺、超言いにくい」

A「？」

・

・

和「何から言っていいかわからないけど････腹肉、すげぇな！と

そのパンツは色気がなさ過ぎるだろ！････は言っておこうかな」

・

・

・

和也のその言葉で････電話の最初の言葉を思い出す。

『お前、スカートのファスナーあいてるよ』

・

・

・

セールで買った白いスカート･･･の、

左側に付けられたファスナーがカッパァ！とあいていた。

・

・

・

ベージュの、レースも何もついてない「透けないパンツ」が丸見えで。

そのパンツの上に乗った腹肉もちょい見えで。

・

・

・

A「ギャーーーーーーーー！」

私は慌ててファスナーを上げながら

嘘！？いつから！？朝から！？仕事中は･･･大丈夫、白衣着てたから見えてない、よね！？

ああ、もう、見栄張ってキツイサイズのスカート買うんじゃなかった。

もっとゆとりがあったらファスナーあいてたってパンツ見えなかったかも。

ああ、やだ、腹肉････。

ああ、私、腹肉のウブ毛濃いんだよな･･･ああもう！ああもう！ああっ！

頭の中で「大丈夫！たいしたことないさぁ！」と慰める私と「アチャー」と顔をしかめる私が

暴れに暴れていて、ああっ、もう！

ああぁ！目の前には大野さん！ヒィ～！腹肉なんて皆無な大野さん。

大野さんが笑いを噛み殺してる。

ウコン細粒・腹肉・ベージュパンツ･･･イケてない女の三種の神器やぁ！

・

・

・

和「･････で？お宅、どちらさん？」

・

・

和也が、大野さんに笑顔で聞いた。