＊この世で最も美しく、哀しくない話part５＊ (ページ18)

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飯･･････。

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私は言葉を失って小さく笑った。

ナンパをされるような可愛い女子じゃないし。

ほぼ初対面の男の人に食事に誘われる経験なんてない。

しかも、こんないわゆる「素敵なお医者様」･･･な人に。

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A「えー･･･っと･･･」

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ああ、もう。女子力がないったらもう。

別に相手はただ飯食っていかね？ってだけだろうに、私がこんなに

キョドっていることが恥ずかしいわ。

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その時、私のカバンの中で携帯が♪♪♪♪･･･････････音を鳴らす。

A「あ！あ、すみません･･･」

大野さんはどうぞ？と言うように微笑んだ。

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アワワアワワ･･とカバンを漁る。

漁った拍子にウコン細粒が入った袋がポロリと落ちて、それを大野さんが拾い、

笑いを噛み殺した顔で私に渡してくれた。

私は「ああぁ！酒飲みがバレたぁ！」と内心ドキドキしながら受け取り、

A「はい！！！」

誰からの着信かも見ずに電話に出た。

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『お前、スカートのファスナーあいてるよ』

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耳に届いたのは。

ひどく懐かしい声。

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耳に届くその声が、全身に染みていく。

･････････おかしいな････。

声が、身体に温かく満ちていく。

声が、心に温かく満ちていく。

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A「･････和也････」

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名前を呼ぶと、どうしてだろう。心の奥が大きく跳ねた。

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A「･･･なによぅ、連絡もよこさないで･･･････」

大野さんの目の前だということも忘れて、私はいつもの憎まれ口。

和「お前だって連絡してこないだろうが」

A「････そうだけど････なによう」

････････そこまで言った所で、左肩をポン、と叩かれる。

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知ってる。この、ポン、って。

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知ってる。

A「････なによぅ･･･」

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・

振り返ったそこには、電話を持った和也。

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髪が随分、短くなってる。

相変わらず白い頬。意地悪そうな顔。薄いピンクの変な絵が描かれたそのＴシャツも知ってる。

そのジーンズも知ってる。

ああ、悔しいな。会えた嬉しさに浸ってる自分が、悔しいな。