＊この世で最も美しく、哀しくない話part４＊ (ページ9)

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A「････和也」

和「はい？」

和也がんしょ、と起き上がって私の横に胡坐をかいて座る。

カチ、と煙草に火を点けた。

煙が、大きく開けた窓の外へ、網戸を潜り抜けていく。

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A「･････私さ。今日、なんか、分かっちゃった」

和「俺のかっこよさか」

A「私と雅紀さ」

和「ガン無視か」

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和也が煙草を咥えたまま、部屋の片隅に置いてあった蚊取り線香を１枚取って

火を点けた。

和「蚊いるよな？」

A「網戸破れてるからね」

和「そりゃ入るよな」

煙草の煙と、蚊取り線香の煙。

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和也がガラガラ･･･と木枠の窓を開けて、石畳の上に蚊取り線香を置く。

そしてまた、私の横に座った。

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和「お前と相葉くんはもう無理だよ」

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和也が、煙草の煙をふぅ、と吐いた。

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庭にさしこむ月明かり。

白く、青く、淡く、照らされた庭の木々達。

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和「好きな男と一緒にいても苦しいだけの恋愛なんて、やめておけ」

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和「簡単に想像がつくわ」

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和也がまた、ふぅ。と煙を吐く。

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和「一緒になっても二人して、あの時は憎かった、辛かった、苦しかった。

チヅルさんを傷つけたんじゃないか。子供を苦しめたとか、

だから私達は笑って幸せでいなきゃとか、大好きだから頑張れるとか

しょーーーーうもないことで悩んで疲れ果てる二人が」

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和「簡っ単に想像がつく」

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「最初にな」和也の声が、煙と一緒に空へ登っていく。

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和「浮気相手になんか負けるか、子供なんか知るか、雅紀は渡さねえ！と

言えなかったお前の恋は、そこで終わったんだよ」

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和「････泣くな、ブス」

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和也の掌が、私の頭をポン、と撫でる。

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和「そんな強くも汚くもなれないお前を、相葉くんは

愛してくれていたんだからもう」

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和「それだけでいいだろ」

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和「･････････楽になれ」

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和也が咥え煙草のまま、小さく、言った。