＊この世で最も美しく、哀しくない話part４＊ (ページ21)

今日:3 hit、昨日:6 hit、合計:1,020,964 hit

９６　ページ21

ホテルの和食････なんて、全く縁のない世界だ。

「こちらへどうぞ」と通された個室は、４人で食事をするには広すぎる気がした。

まだ和也の両親は来ていなくてホッとしたけれど････。

カ、カウンターでいいっす、私。

ラーメン屋のカウンターでいいっす！ああ、緊張してきた。

・

・

和「ぶ・笑。お前、緊張してる？」

隣に座った和也がフフ、と笑う。

A「するよ！････あぁ～･･･だって嘘つくんでしょ？うう～･･･気が進ま･･･」

和也が冷たい目で私を見ながら、でこピンの用意をしてるので黙った。

・

・

A「初めまして、でいいんだよね？」

和「まぁ適当に」

A「適当ってアンタ、他人事みたいに」

和「他人事だもん」

A「和也･･･和也くん？和也さん？･････あぁ、どうしよう。思わず

この腐れ外道が！って出ちゃったらどうしよう･････」

和「腐れ外道の私を愛してくれてありがとう、って続けろよ？」

和也が湯気が出るおしぼりで手を拭きながら笑った。

・

・

和「要はさ。俺とお前が幸せに生きてるって親父たちが思えばいいんだから」

・

・

それだけ言って、お品書きを開く和也の横顔は

両親に嘘をつく負い目なんてどこにもなさそうで。

やっぱりコイツは昔から何を考えているか分からない、と思う。

･･････なんで医者にならなかったのかな。

ふと、そんな疑問が浮かんだ。

医大に行ける学力は余裕であったはずだ。

人を助けたい！････なんて殊勝なことは言わないだろうけど、さ。

・

・

和「･････んだよ」

A「別に」

どうせ聞いたって「アッチョンブリケ☆」しか言わないだろうから聞かない。

・

・

・

閉められた襖の向こう側から「二宮様、こちらへどうぞ」という

スタッフの声が聞こえた。

！！！来た！

ドキン、と心臓が跳ねる。

「いよいよだね！」そう和也に言おうと横を向いたのと。

襖が開いたのと。

和也が、私の唇にキスしたのと。

・

・

同時だった。

・

・

A「～～････････っ！」

チュ、と離れた和也の唇は、形よく開き････

和「ヤベ。親父たちに見られちゃったな、A☆」

と黒い台詞をサラリと吐きやがった。････････くそぅ･･･！