＊この世で最も美しく、哀しくない話part２＊ (ページ9)

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その夜、夢を見た。

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青い夜の色。

まるで海の中みたいに、世界がゆらゆら揺れる。

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A「ゴメン、ちょっとシフト変わることになったんだ」

私は更衣室の片隅でタジマさんに聞こえないように小声で雅紀に電話をかける。

外回りから戻って、ちょうど会社の前に着いた所だ。という雅紀はいつもみたいに明るい声で答えた。

雅「そっか、ウン、分かった。じゃあ週末にでも今日の店、行こうぜ♪」

A「ウン」

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優しいな、と思う。

私と雅紀は小さな喧嘩もほとんどない、ベタベタとくっつきあったりはしないけれど

仲の良いカップルだと自分でも感じていた。

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明日は２人共仕事は休み。

今夜、仕事が終わったら雅紀の１人暮らしのアパートに行こうかな。そう言おうとした時に

『Aちゃん？』

雅紀の後ろから聞き覚えのある声がした。

雅「うわ、びびった。何、お前も今帰りかよ」

『Aちゃん、元気～？？』

雅「俺を無視してAに話しかけんなよ・笑」

電話の向こうで雅紀が笑っている。

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雅紀の同期のムラカミくんの声だった。

数回、会ったことがある、体育会系で身体が大きくて、いつもニコニコしてる優しい人。

『なに、デートキャンセルされた？笑』

雅「うるせぇな・笑。ヤダねー、独り身は人の恋愛に首つっこんで・笑」

『あ、それ言うか？笑』

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私に対するより少しぶっきらぼうな雅紀の声を聞くだけど

頬が緩む。

温かい気持ちで「雅紀、じゃあ、また仕事終わったら電話するね」電話を切ろうとした。

『デートが無くなったならお前も来いよ、ほら、カミヤさんの送別会』

雅「え？カミヤさんの送別会、来週じゃねぇの？」

『若い子だけで今日やろうって話が出てんだよ。お前も来いよ～』

雅「･････んー････」

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雅紀のちょっと困った声。

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なんとなく感じた。

雅紀も今夜、私に会いに来て欲しかったのかな。なんて。

勝手な想像だけど、嬉しかった。

だけど、もうすぐいつも一緒にいれる。

一緒の家に帰ることになる。それも、嬉しかった。

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A「行ってきたら？」

その一言が、夢の中で何度も何度も聞こえる。

きっと私は、夢を見ながら泣いている。

夢の中でも、泣いている。