＊この世で最も美しく、哀しくない話part２＊ (ページ21)

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身体の奥が熱いのか、凍えているのか、よく分からない。

彼女は美しく、それなのに、闇に包まれている。

闇の中で、微笑んで私に刃を向けている。

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反論したい言葉は、何なのか、自分でもよく分からなかった。

雅紀のことなんかもう忘れたけど？そう言って、

少し微笑む強さが欲しくて、

だけど威圧する表情が、言葉が、強いというのなら

チヅルさんが強いというのなら

私はそんな強さ欲しくないとも思って。

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「うるせぇ、ブス」

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チヅルさんの後ろで、低い声がした。

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A「･･････和･･也･･･」

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チヅルさんの後ろに立っているのは、薄いピンク色の長袖シャツに

黒いパンツ姿の、和也だった。

朝、別れた時の格好。

手にした仕事用のカバンで、和也が仕事帰りに直接ここに来たことを悟る。

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チヅル「････は？」

チヅルさんが眉を顰めて和也を見た。

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和「あ、ゴメンネ？聞こえなかった？うるせぇブスって言ったんだけど」

和也がニッコリと微笑む。

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そして微笑んだまま、言った。

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和「こんな台詞言われたの生まれて初めてでしょ？だよね～、美人だもんね～。

キミは思いつく限りの言葉でAを傷つけようとしてるからさ、

俺も同じだけの言葉でギッタンギッタンにしてやればいいんだけど･･･」

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和也が首を横に傾げた。

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和「キミへの暴言を考える時間がもったいない」

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和「うるせぇブス、これくらいで充分かな☆」

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チヅルさんは青い顔で和也を見上げたまま、動かなかった。

和也がまた微笑む。

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そして私を見た。

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和「オラ、とっとと俺を櫻井くんに会わせてラーメンオゴれよ。

その白衣脱いでこい。帰るぞ」

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何様だ！と言ったら、やっぱりこの男は「二宮和也様だよ」と言うんだろう。

和也が、涙で滲む視界でいつもみたいに意地悪く笑った。