＊この世で最も美しく、哀しくない話part２＊ (ページ3)

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秋の終わりまで友達だった。

２人きりで会ったことなんてなかった。

いつも大勢で会っていて、その輪の中で何度も何度も目が合った。

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目が合うたびに雅紀が笑う。

瞳だけで笑うこともあったし、口パクで何か言う時もあった。

甘い甘い、だけど苦しい恋の始まりの時間だった。

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初めて２人で会ったのは「････映画のタダ券貰ったんだけど、行かない？」という

古いドラマみたいな雅紀の言葉。

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エンディングが流れるまだ暗い映画館で

周囲がザワザワと帰る用意を始める中で

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雅「好き」

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雅紀の、小さな小さな、声がした。

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パチン、と心の中の膜が割れる。

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甘い甘い恋が、心を満たす。

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雅「･･･好きです」

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あらためて丁寧に言い直してくれる雅紀を

私も好きで好きで好きで好きで好きで、大好きで、涙が零れた。

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冬の乾いた空気の中で初めてのキス。

初めて身体を重ねた朝、雅紀が言った。

雅「ずっと月曜、水曜、金曜が楽しみだった俺のこと、知らないだろ」

照れたように笑う雅紀が涙で滲む。

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雅紀はかっこよくて、女の子から人気があって、不釣合いな自分にウンザリした。

だけどいつしか私は不安を抱くこともなくなっていく。

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大事にされている。

とてもとても大事にされている。

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恋なんて、彼氏なんて、何も知らなかった私ですら分かるくらい

雅紀は優しかった。大事にしてくれた。

くだらないことを言って笑う。

美味しいものを一緒に食べる。

たまに小さな喧嘩。そして仲直り。

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同い年だけど先に社会人になった雅紀と、まだ学生の私と、

生活が変われば心も離れてしまうのかと不安になったけれど

新人研修等で忙しい雅紀と、実地研修と国試への勉強で忙しい私と、

会える時間は少なくても、いい感じに応援しあえる時間が続いた。