＊この世で最も美しく、哀しくない話part２＊ (ページ20)

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A「････何か、ご用ですか」

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掠れた声で聞く。

胸の奥が熱い。

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正三さんが店の中に入っていて良かった、と思った。

きっと私は、今、めちゃくちゃ醜い顔をしている。

そんな顔を、見られたくない。

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「用がなかったらあなたに会いに来たりしないわよ・笑」

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彼女は、日傘を下ろした。

白い透明な肌と、大きな瞳。

長い睫。口元の小さなほくろ。

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「まだ未練たらしく雅紀を好きなの？」

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全身が、震えた。

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･････････････雅紀･･･････････。

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雅紀。雅紀。雅紀････････。

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「きちんと言っておこうかな、と思って」

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彼女が目を見開いて、面白そうに言った。

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「あなたは２年前、私に雅紀を盗られたって思ってるんでしょうけど。

盗られたあなたが悪いと私は思ってる。

自分の魅力のなさを他人のせいにしないでね？

今度はあなたが私から雅紀を盗る？

それってね、子供から父親を盗るってことよ？そんなことしちゃう？」

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カツン、と彼女が一歩私に近づいた。

私の身体が、強張る。

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「あなたが終わった恋にしがみついている間に、私と雅紀は先に進んでいく。

あなたは雅紀との幸せだった思い出を繰り返してるだけでしょう？

知ってる？雅紀がどんなふうに子供をお風呂にいれるか。どんなふうに公園で遊ぶか。

パパ、って呼ばれてどんな顔で笑うか。雅紀は子供と手を繋いで眠るのよ？

私と、雅紀の、子供とね？」

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吐き気がした。

ガンガンと頭を殴られている気がした。

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「雅紀の妻はあなたじゃない。雅紀が呼ぶのはあなたの名前じゃない。

『チヅル』････雅紀がいつも呼ぶ名前は、私の名前なの」

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チヅルさんは。

薄く微笑んだまま、私の心を何度も何度も切り裂いた。