＊この世で最も美しく、哀しくない話part２＊ (ページ19)

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和「ラーメンいいなー･･･」

A「････来なくていいよ」

和「ラーメンと櫻井くん････いいなー･･･」

A「来なくていいって」

和「お前来なくていいから、俺が櫻井くんと一緒にラーメン食べたい」

A「なんでだよ！」

和「あの端正な顔立ちで正論しか言わない男の子を、コテンパンに泣かしてみたい♪」

A「訴えられてしまえ」

和「俺も行くわ」

A「来なくていいって！」

和「お前が来なくていいって！」

A「だからなんでよ！」

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どこのラーメン屋に行くんだ。

教えるか！

気の毒だな、ラーメン屋にしか連れて行ってもらえない女子力が気の毒だな。

うるせぇ！

櫻井くんに会わせろ！イケメンはイケメンと飯食いたいんだよ！

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私と和也は玄関を出てからもギャーギャーギャーギャー言い争い、

駅に向かう和也と別れる四つ角までギャーギャー言っていた。

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朝のその騒がしさは日中もどこか頭にあって、

夕方。店先の花に水やりをしていた正三さんが

「Aちゃーーん。Aちゃんにお客さんだよ～」

と私の名前を呼んだ時も、和也がやってきたんだと思った。

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ニヤニヤ笑いながら「このままラーメン屋までお前をつけていってやる！その為の早退だ！」

と言う残念な和也は簡単に想像がついたから。

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白衣姿のまま、店先に出る。なにしに来たのよ、と言おうとしていた言葉が

喉の奥で焼け落ちた。

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「お友達かい？どうせ今日も暇だからAちゃん、もうあがっていいよ」

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正三さんが鉢植えの雑草を１本、スポン、と抜きながら笑う。

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白く、細く、長い足が、ネイビーのワンピースから真っ直ぐ伸びている。

白い華奢なピンヒール。

沈みかかった太陽の下でも刺す、黒いレースの日傘。

白とゴールドのネイル。

胸元で揺れる髪。

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磨きあげられた全身は、どこから見ても「母親」じゃなく「女」だった。

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もしどこかで出会ってしまったら、と想像して震えたことがある。

彼女の腕に抱かれている子供を想像して震えたことがある。

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彼女は１人だった。

それに一瞬ホッとして、だけど全身から漲る女の情念に。

身体が震えた。

「お友達、だって・笑」

フフ、と笑うその声に、身体が震えた。