＊この世で最も美しく、哀しくない話part２＊ (ページ17)

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雅紀のことを考えないようにすればする程、考えてしまう日々をぼんやりと過ごす。

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毎日、職場では正三さんとのんびり会話をし、

毎日、家では和也とキーキー激しい会話をし、

それでも心は、雅紀の顔と、声と、空気の横にいる。

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今、どこに住んでいるんだろう。

２年前、あの出来事の後、雅紀は転勤になったはずだった。

それを私に教えてきたのは、あの女の人だ。

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「転勤になってホッとした♪」

私の職場の前で待っていた彼女は、そう言って笑った。

「近くにいたら、いつまでもアナタが雅紀にチョッカイ出しそうだもの」

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妊婦だという彼女が履く華奢なピンヒール。

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大事にして欲しい。

お腹の中の命も、雅紀も。

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そう言えない自分の、心の奥の言葉に出来ない悪意に、眩暈がした。

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どこで私の住所を調べたのか、実家に「結婚しました」ハガキが送られてきたのは

それからしばらくしてからだ。

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雅紀のものじゃない文字が、ハガキに載っている。

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あの日。

うまく泣けず、うまく叫べず、ベロベロに酔っ払った私を家まで送ったのは

和也だった。

私の指からそのハガキを取り上げた和也は「なにこれ」と小さく聞いた。

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私は何も答えれなかったけれど、和也はそれ以上何も聞くことなく。

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カチ。という小さな音と共に、ライターでそのハガキを焼いた。

メラメラと燃える炎は、私だ。そう思った。

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２年前と同じように、「彼女」が私に会いにきたのは

雅紀との再会から１週間がたった日だった。