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翔「･･･シオリ･･･」
横たわるシオリの頬を撫でる。
温かい。小さな小さな吐息が掌に伝わる。
・
・
痩せて窪んだ目は閉じられ、長い睫には涙はなかった。
翔「･････シオリ････」
柔らかい髪を撫でる。
・
・
シオリが薄く瞳を開ける。
口元を覆った酸素マスクを細い指がずらす。
医者は、止めなかった。
・
・
・
「翔･･････間に合った････」
翔「･････うん･･･」
「雫･･･････」
雫が「お母さん･･･！」小さく叫び、シオリの指を握り締めた。
俺は雫の肩を抱える。細い、細い１６歳の少女が背負う哀しみを抱える。
・
・
「･･･ありがとうね」
小さい小さい、シオリの声が震える。
「･･･人生の最期に、いっぱい、幸せ、貰った」
出会った秋の雨の日が蘇る。
大丈夫ですか、と手をさしだした俺にシオリはゆっくりと微笑んだ。
頬を伝うのは雨だけじゃなく、涙だと分かった。
まるで初恋の中学生みたいに、恋に慣れていない若造みたいに、必死に話しかける自分が
無様だと分かってはいたけれど、止まらなかった。
無理矢理会う予定を作り、必死に会話を繋ぐ俺に、
シオリは恋を始める前に言った。
・
・
もう長くない。･･･････娘を置いて逝くなんて。たった１人、あの子を残して逝くなんて。
・
・
ヒィ･･･と悲鳴と共に崩れ落ちたシオリに。
・
・
俺の最初で最後だと思った愛に実らない未来を知り。
絶望を知り。
憎悪を知り。
希望の欠片を知り。
もう１度絶望を知り。
何度も夢を抱き、希望を抱き、それらが砕け散る音を聞き。
・
・
・
それでも心に残る愛を知った。
逝くなと叫ぶことは出来ず。
ただ、彼女が少しでも心穏やかに逝けるよう、俺は彼女の最期に覚悟を決める。
・
・
・
翔「･･･よく、頑張ったね」
そう、子供を撫でるように、闘い続けた愛おしい人の頬を撫でた。
・
・
翔「俺はこれから、雫の為に生きるよ」
・
・
だからどうか安心して。
もう、痛みのない世界で、ゆっくり眠ればいい。
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・
・
シオリの長い長い闘いが終わったと、無機質な機械音がピーーーー････と
部屋に響いた。
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革ベルト
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storm1030(プロフ) - つづきは？ (2015年6月27日 18時) (
レス) id: 43817020fb (このIDを非表示/違反報告)
なつみ(プロフ) - すごく素敵なお話ですね。とても感動しました。その後が気になります(´ω｀) (2015年3月1日 16時) (レス) id: 2d33a07c6c (このIDを非表示/違反報告)
優(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます。瀬音さんのお話がだいすきです。未成年なのでフラグがついていない作品を読ませていただいています。どれもこれもどストライクです。続きを楽しみにしています。時子さん切ないっ……!! (2015年2月4日 16時) (レス) id: 785f67a003 (このIDを非表示/違反報告)
ひつじー(プロフ) - 更新１話分で泣いて、オマケで引っ込んだ……なんか思い通りにされすぎてコワイ！子供の卒園式でちょっと泣いて友達に驚かれるくらい、全く泣きそうにない人間なんですが……。 (2015年2月4日 5時) (レス) id: 999ce25bef (このIDを非表示/違反報告)
ハプ(プロフ) - トキコさんと翔さんのお母さんの気持ちを考えたら、切なすぎて何とも言えない感情になりました。 (2015年2月3日 22時) (レス) id: c475130eed (このIDを非表示/違反報告)
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