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ガタガタと大きな音が屋根から聞こえたのは一瞬で、風と雨の音の方が強く、強く、
耳に響きだした。
レインコートの隙間から雨が入ってくる。
夏といっても冷たい雨が体温を奪おうとするのを、手の甲で顔の雨を拭いて止めようとして、
諦めた。
あとでゆっくり熱い風呂に入ればいい。
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「翔、気を付けて頂戴よ！」母さんの声に振り向くことなく、屋根の上に登った。
めくれ上がっている部分を左手で押さえようと手を伸ばしたけれど
強風に煽られて体勢が揺らぐ。
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俺は勉強が出来て、それなりに運動でも出来て、だけどこういう日曜大工的なことはしてこなかったな、と思った。
親父ならもっとサクサクと直せるんだろうな。
彼氏、ならそれで良かった。
夫になったら、こういう家の事を少しずつやるようになっていくのだろう。
･･･････その経験がなく、今、父親に。
経験がないとうだうだ言っても仕方ない。
俺は出来ることをやり、その全てを雫に伝えていければいい。
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「気を付けて！」
下で雫の声がして、心配をして貰える幸福を、一瞬噛みしめた。
翔「うん」
ありがとう。と言うのは照れくさくて、下を向いてそう短く答えた時に
手で押さえきれていなかった屋根の一部が、バリバリ･･･と一段と大きく、風に煽られた。
翔「････！」
めくれた板はそのまま宙に浮いた。
やべ！と思ったのに板に手は届かず。
板が空を飛ぶ。
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スローモーションのように、凶器と化した板が舞うのを目が追う。
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板がそのまま勢いよく飛んでゆく先に、雫がいた。
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「雫ちゃん！」母さんの叫び声を聞いた気もしたし
「きゃあ！」という雫の悲鳴を聞いた気もした。
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脚立から飛び降りた足が痛い、と思った。
やべぇ、足挫いたな。と、鈍い痛みの足を引き摺りながら思った。
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腕の中に、細い雫を抱きながら、雫が顔をあげるのを、見た。
激しい雨音。
激しい風音。
ああ、良かった。
雫は、怪我してねぇな。と理解して笑った。
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雫の顔がぐしゃぐしゃに歪み「･････ヤダ！どうして、ヤダ」と呻き声をあげて
雫の手が俺を身体を抱き締めてようやく、俺の背中に大きな板が当たったことと。
自分の血の匂いと、痛みに、気付いた。
ラッキーアイテム
革ベルト
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storm1030(プロフ) - つづきは？ (2015年6月27日 18時) (
レス) id: 43817020fb (このIDを非表示/違反報告)
なつみ(プロフ) - すごく素敵なお話ですね。とても感動しました。その後が気になります(´ω｀) (2015年3月1日 16時) (レス) id: 2d33a07c6c (このIDを非表示/違反報告)
優(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます。瀬音さんのお話がだいすきです。未成年なのでフラグがついていない作品を読ませていただいています。どれもこれもどストライクです。続きを楽しみにしています。時子さん切ないっ……!! (2015年2月4日 16時) (レス) id: 785f67a003 (このIDを非表示/違反報告)
ひつじー(プロフ) - 更新１話分で泣いて、オマケで引っ込んだ……なんか思い通りにされすぎてコワイ！子供の卒園式でちょっと泣いて友達に驚かれるくらい、全く泣きそうにない人間なんですが……。 (2015年2月4日 5時) (レス) id: 999ce25bef (このIDを非表示/違反報告)
ハプ(プロフ) - トキコさんと翔さんのお母さんの気持ちを考えたら、切なすぎて何とも言えない感情になりました。 (2015年2月3日 22時) (レス) id: c475130eed (このIDを非表示/違反報告)
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