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親父と母さんが虹沢にやってきたのは、翌日の午後のことだった。
翔「･････親父も来てくれたの」
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葬儀会場の前に着いた、という母さんからの電話を受けて正面玄関へ出て、驚いた。
親父も一緒だったからだ。
喪服姿の親父は相変わらず背筋を伸ばし、生真面目な顔で俺を見て小さく頷いた。
俺と親父は顔かたちがよく似ていて、親父に自分の未来を見る。
雫はその未来をも失った気がしているのだろうかと思った。
母さんは俺を真っ赤な瞳で見つめた後、シオリのまるで眠っているような美しい顔を見つめた。
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「････シオリちゃん。････お疲れ様」
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母さんが黒い小さなバッグから、小さな、小さな、箱を取り出した。
「翔」
翔「ん？」
母さんの細い指がパカ、とその箱を開けると、中には華奢な…金色の指輪。
小さな小さな赤い石が付いている、金色の指輪が静かに収まっていた。
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母さんがゆるく巻かれた髪を耳にかけながら、少し、微笑んだ。
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「この指輪ね、おもちゃみたいなものなのよ。････でもね、母さんには
すごく思い入れのあるものでね」
確かに指輪が収められていた箱はブランド名などなく、母さんが和紙で手作りしたものに見えた。
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「･････翔の、お嫁さんになる人にあげようと思っていたの」
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親父が、苦しそうに眉を顰めた。
母さんは穏やかに微笑んだまま「シオリちゃん。持っていってくれる？」そう
シオリの横顔に囁き、
雫に「お母さんに、持たせてもいい？」小さく尋ね
雫が「････はい。････ありがとう、ございます」小さく小さく答えると同時に
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ポロポロと涙が、落ちた。
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終わりが近づいていく。
キラキラと華奢な、レトロな指輪がはめられた細い細い指が
あちらの世界へ旅立ってゆく。
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シオリの身体が消えていく。
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愛した人の肉体が、消えていく。
ガシャン、と大きく冷たい音を立てて閉まる扉。
「お母さん････････！」
その扉にしがみつこうとする雫の肩を掴んだ。
炎の熱さが、炎の音が、伝わるわけもなく、聞こえるわけもなく、
それでも雫の身体を抱き締めた。
「お母さん････････！」
母への愛を、母への別れを、叫ぶ雫を、ただただ抱き締めた。
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革ベルト
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storm1030(プロフ) - つづきは？ (2015年6月27日 18時) (
レス) id: 43817020fb (このIDを非表示/違反報告)
なつみ(プロフ) - すごく素敵なお話ですね。とても感動しました。その後が気になります(´ω｀) (2015年3月1日 16時) (レス) id: 2d33a07c6c (このIDを非表示/違反報告)
優(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます。瀬音さんのお話がだいすきです。未成年なのでフラグがついていない作品を読ませていただいています。どれもこれもどストライクです。続きを楽しみにしています。時子さん切ないっ……!! (2015年2月4日 16時) (レス) id: 785f67a003 (このIDを非表示/違反報告)
ひつじー(プロフ) - 更新１話分で泣いて、オマケで引っ込んだ……なんか思い通りにされすぎてコワイ！子供の卒園式でちょっと泣いて友達に驚かれるくらい、全く泣きそうにない人間なんですが……。 (2015年2月4日 5時) (レス) id: 999ce25bef (このIDを非表示/違反報告)
ハプ(プロフ) - トキコさんと翔さんのお母さんの気持ちを考えたら、切なすぎて何とも言えない感情になりました。 (2015年2月3日 22時) (レス) id: c475130eed (このIDを非表示/違反報告)
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