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雫はずっと、動かない。
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幾度か食事を勧めたけれど、首を横に振るだけの返事だ。
線香の煙がゆっくりと天へと流れていく。
シオリの魂も、今、ゆっくりと空へ向かっているのだろうか。
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このまま、思いっきり泣ければ。
周囲を、未来を見ず、思いっきり泣けたとしたら俺は楽になれるのだろうか。と一瞬思う。
その一瞬の淡い夢を、雫の横顔を見てそっと胸にしまう。
今、俺がすべきことは泣くことじゃない。
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葬儀場には親族が泊まれる部屋があった。
ああ、ここはそういう場所なのだ。と思う。
家から離れてこの地にやってきた患者の最期を見送る場所なのだ。と思う。
仮眠室には雫だけを残し「おやすみ」小さく声を掛けてドアを閉めた。
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頭が、身体が、重い。
ロビーの椅子に腰掛けた。安っぽい椅子がギシ、と軋む音を立てる。
腕時計を見て、手首が随分細くなったな。と小さく笑った。
胸ポケットから煙草を出して火を点ける。
････････無理にでも寝なくては。････駅前にビジネスホテルがあったはず。
熱いシャワーを浴びよう。俺が倒れる訳にはいかない。今、俺が。
哀しみに倒れる訳にはいかない。
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「････翔、さん･･･」
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人影のない、無機質な電球の灯りの中で、声がした。
驚いて振り返る。
振り返った瞬間に煙草の灰が床に落ちた。
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翔「･･･････････ああ」
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振り返った先にいたのは。
トキコさんだった。
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翔「････驚いたな･･･」
こんな時間に、こんな場所に。
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トキコさんが頭をゆっくり下げた。
長い髪がサラリと、流れた。
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「病院で聞きました」
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「････急だったんですってね」
小さな声は、鈴のようにチリン。と俺の心を震わせる。
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「･････嬉しかったでしょうね、最期に貴方に会えて」
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その言葉に、俺の心が震える。
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storm1030(プロフ) - つづきは？ (2015年6月27日 18時) (
レス) id: 43817020fb (このIDを非表示/違反報告)
なつみ(プロフ) - すごく素敵なお話ですね。とても感動しました。その後が気になります(´ω｀) (2015年3月1日 16時) (レス) id: 2d33a07c6c (このIDを非表示/違反報告)
優(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます。瀬音さんのお話がだいすきです。未成年なのでフラグがついていない作品を読ませていただいています。どれもこれもどストライクです。続きを楽しみにしています。時子さん切ないっ……!! (2015年2月4日 16時) (レス) id: 785f67a003 (このIDを非表示/違反報告)
ひつじー(プロフ) - 更新１話分で泣いて、オマケで引っ込んだ……なんか思い通りにされすぎてコワイ！子供の卒園式でちょっと泣いて友達に驚かれるくらい、全く泣きそうにない人間なんですが……。 (2015年2月4日 5時) (レス) id: 999ce25bef (このIDを非表示/違反報告)
ハプ(プロフ) - トキコさんと翔さんのお母さんの気持ちを考えたら、切なすぎて何とも言えない感情になりました。 (2015年2月3日 22時) (レス) id: c475130eed (このIDを非表示/違反報告)
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