＊未来地図＊ (ページ6)

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A「結婚式は白無垢が着たいんだよね」

潤「へぇ」

A「ドレスより断然、白無垢！なんか厳かじゃない？憧れだったんだよね～小さい頃から」

潤が「似合うんじゃない？」なんて笑うから、私はエヘへ、と笑う。

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A「結婚式は親族だけでさ、披露宴もいらないなぁ、恥ずかしくない？ゴンドラ乗って降りてくるの」

潤「別に披露宴イコール、ゴンドラじゃないだろ・笑」

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A「新婚旅行はね、海が綺麗な所に行きたいなぁ～、ゆっくり２人で過ごしたい」

潤「あぁ、海はいいよな」

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夢物語だ。

夢の話をするフリをして、あの人に言えなかった未来を語る。

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言葉を止めたら、涙が落ちる、と思った。

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叶うはずのない未来を、笑って話す自分が

機械仕掛けの人形みたいだと思った。

機械のように、何度も何度もあの人に言った。

「私は大丈夫だよ」

クリスマスも、お正月も、土曜日も、日曜日も、１人で笑った。

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作りあげた笑顔と言葉が、自分を追い詰める。

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会った日の夜に、シャワーも浴びずに奥さんの所に帰っていくあの人を

笑顔で見送った。

アパートの階段を降りて行くあの人は、いつも振り返らなくて

でも私は、その背中が見えなくなるまで見送った。

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もし振り返って手を振ってくれたら、

涙が見られてしまうから、

あの背中が消えるまで泣かないと決めて、気付いたら泣けなくなっていた。

････あの人は、１度も振り返ってくれなかったけれど。

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潤「･･･････おい、A」

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潤に名前を呼ばれて、はっと顔を上げる。

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潤「Aさ、殴らないでよ？」

A「殴る？」

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潤「ん」

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薄暗いバーの片隅。

磨き上げられたカウンター。

ガラスの灰皿に置かれたタバコの煙。

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あ。と思った時には、潤の唇が、私の唇に触れていた。