＊カルマの欠片たち＊ (ページ10)

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白詰草-シロツメクサ-＊相葉雅紀＊３ページ10

A「･････決めたんだね」

小さな声で、Aがそれだけ言った。

俺は深く頷く。

これ以上何か言ったら、涙が毀れそうだった。

俺が泣くなんて、もう泣けないミカコが可哀想過ぎると思った。

A「････さようなら」

Aがスク、っと立ち上がる。

カツカツ･･･とヒールの音が耳に響く。

去っていくAの音が、耳に響く。

・

６年間の恋の終わり。

愛していた人が、愛している人が、去っていく。

どうか、どうか、Aだけは幸せになってくれるように、ただそれだけを願い、声にならない声で叫んだ。

・

・

もう一度、ポケットに手を入れる。

タバコの横に冷たい硬い感触。

・

・

その感触を手に染み込ませる。

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・

たった１５歳で、妹ミカコの生涯は閉じた。

あまりに残酷で、あまりに衝撃的な死は、突然、何の前触れもなくやってきた。

捕まった男は笑った。

「美しい少女が欲しかった。恋焦がれたミカコが欲しかった。ミカコの命が尽きる瞬間は、俺しか知らない。

もうミカコは、俺のものだ」

そう、笑った。

喋ったこともない男に、可愛い妹の未来は理不尽に壊された。

新聞や雑誌が面白おかしく書く。

モノクロに印刷された美しいミカコの写真を見て泣き、犯人である少年の目線を隠された写真に

心をズタズタに切り刻み、血を流しながら、怒りと悲しみに泣いた。

・

・

チャンスは一度だけ。

明日、男は移送される。その瞬間だけ。

・

ポケットから冷たい感触のナイフを取り出し、見つめる。

ミカコ。

助けてあげれなくて、ごめん。

怖かったよな、悔しかったよな、哀しいよな。

兄ちゃん、お前と同じ場所にはもういけないと思うけど、それでも兄ちゃんは

自分のすることに何の迷いも、後悔もない。

兄ちゃんはあの男と一緒に闇に堕ちていく。

兄ちゃんが力尽きても、手は離さない。

お前は、温かい場所で笑っていてくれ。親父も母さんも、いつかそこに行くからさ。

・

・

「お美しい方ですね」

突然、横で声がした。