＊カルマの欠片たち＊ (ページ6)

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Capsule＊大野智＊５ページ6

「大野様」

その男が少し困ったように笑う。

「なにか、誤解をされてます」

・

誤解？

タバコの煙の間から、その男を見つめる。

・

・

「ワタクシ、あなたを捕まえにきた訳でも、薄っぺらい正義や倫理観を

論じるためにきた訳でもありません」

男が微笑む。

・

・

「A様からのご伝言をお伝えに参りました」

智「伝言？Aからの？」

「はい♪」

・

その男が左手の指をパチン、と鳴らすと同時に、世界が真っ暗になった。

・

智「･･･････････！！？？」

「素晴らしい！」

男が驚いた顔をしたけれど、きっと内心は驚いていないのだろうと

男の瞳の闇に、目を凝らした。

「この世界に来て、声をあげなかった方は大野様が始めてです・笑」

男が笑う。

「ここでしかお伝え出来ないのが、決まりですのでお許しを」

・

男が息を吸う。

「ではお伝えします。－－－－－－－－－－－智さん」

男が胸ポケットから真っ白な紙を取り出して読み出した。

男の声が僕を捕らえて離さない。

・

「あなたのその綺麗な心に、哀しい罪を遺した私を許してくれますか。

愛しています。ありがとう。･･･愛しています」

・

・

・

････････････A･･････････。

・

A。A。A･･･････。

・

男がパチン、ともう一度指を鳴らすと、世界はあっという間に

葬儀会場の前の道に戻った。

横の国道を走る車の騒音が響く中、男は笑った。

手に持っていたはずの白い紙は、あとかたもなく消えていた。

・

「A様は最初から全部、ご存知だったみたいですよ」