＊カルマの欠片たち＊ (ページ5)

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Capsule＊大野智＊４ページ5

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その男は、Aの葬儀が終わった後、突然現れた。

黒い細身のスーツに黒地のネクタイ。

色白の整った顔立ち。

喪服姿かと思ったけれど、その男は数珠も何も持たず、少し長い前髪の隙間から僕を見つめる瞳が、

お悔やみを述べにきた人間でないことはすぐ分かった。

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智「････どなたですか？」

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「んーと、通りがかりのモノです。本日はご挨拶に参りました」

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智「ご挨拶？」

胡散臭い男を睨みつける。

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「ええ、ご挨拶に」

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そう男は言うと、スーツの胸ポケットから小さな何かを取り出した。

････････青い、カプセル。

智「･･･････こ、れをどこで･･･」

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男がニッコリ笑う。

「これは、彼女を助ける薬じゃなかった」

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びゅう･･････と風が強く吹き、僕とその男の髪が風になびく。

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「彼女を、楽に逝かせる薬だった」

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警察かな、と思う。

ふぅ･･･と僕は息を吐いた。

ポケットから少し潰れたタバコを取り出して火を点けた。

智「･･･････１本だけ吸わせてください」

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不本意だな、と思う。

別に逮捕されても、どんな罰を受けても構わない。

罰を受けるというのなら、僕はあの瞬間に何もかもを捨てた。

この先のありきたりな日常、という幸せを捨てた。

医者としての倫理観を、捨てた。

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ただ、現代の医学では助けることがどうしても出来ないAを、

のたうち回る苦しみが待っているであろうAを、

楽にすることだけを選んだ僕は、もう地獄に落ちている。

後を追いたかった。

追った所でAと同じ場所には辿りつけないだろう。

それでも構わない。

Aのいない世界に残る意味は、ない。

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警察の監視下にいたら、この世界に別れをつげるのは難しいだろう。

それが悔やまれる。