＊カルマの欠片たち＊ (ページ31)

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哀しくも美しい世界＊二宮和也＊６ページ31

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深い夜の闇の中を、以前とは全く違う、軽い身体で歩く。

黒いピンヒールに、黒いワンピース。

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愛を知り、愛に苦しみ、愛を捨てようとする人間の横に立つ。

風が髪を揺らし、哀しい人の涙を地中に沈めた。

「あなたは････誰？」

毎回聞かれる。

私は、毎回微笑んで答える。

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A「神とも悪魔とも呼ばれる･･･ろくでもないものです」

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数人、「彼」を知っているという人に会ったことがある。

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彼は元気ですか？と聞いたのは、永遠の記憶を生きたという人だっただろうか。

もうすぐこの記憶ともお別れです。と、年老いたその人は静かに笑った。

仲睦まじい夫婦の夫が、私を見つけて頭を下げたこともあった。

白髪の老医師が私に小さく微笑んだこともあった。

彼に救う気があったかどうかは分からない。

けれど、彼に救われた人間がいたことは、事実だ。

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彼は、自分の黒い羽を嫌悪していた。

言えば良かったな、と今でも思う。

「和也の、黒い羽がとても綺麗で、とても好きでした」って。

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私は、あなたの闇の奥に、光を見ました。

あなたは、私の生きる道標でした。

あなたを、愛していました。

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私は後悔はしていない。

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闇の中でも光はある。

この背中に生える黒い羽も、お気に入り。

なにより、あなたをこの永遠の命というカルマから救い出せた。

それだけで私はこの先の永遠を温かい気持ちで過ごせるだろう。

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私は今日、小さな産院の窓辺横の木に腰掛けて、待つ。

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元気な産声。涙ぐむ母親。喜ぶ父親。

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オギャァオギャァと高い声で泣く、今日生まれた命が

どうか幸せになりますように。

大丈夫。大丈夫よ？

あなたが悲しい時は、泣きたい時は、私が空から降りていく。

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あなたを包んであげる。

抱き締めてあげる。

あなたが、私にそうしてくれたように。

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「お誕生日おめでとう、和也･･･････」

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黒いワンピースが、風にひらりと舞い、私は生まれたばかりの和也に

小さく手を振った。

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哀しくも美しい世界＊二宮和也＊END