＊カルマの欠片たち＊ (ページ30)

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哀しくも美しい世界＊二宮和也＊５ページ30

哀れな。

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暗い森の中、人でないもの達が口々に囁く。

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見てごらん？あれが永遠の時を１人で生きる男だよ？

あざ笑うかのような、哀れむような声を無視して、深い森を歩く。

どこをどれだけ歩いても、どこをどれだけ飛んでも、行きたい場所にはたどり着けない。

空の月が零した涙で、肩が濡れる。

空よ、風よ、雲よ、月よ。

・

俺と同じ永久の時を生きるもの達。

・

空が色を変える。風は匂いを変える。雲は形を変える。月は欠けて満ちる。

・

俺だけが形も何も変わらず、この世界を生きる。

･･･････････生きる、はずだった。

・

・

和「･･････A･･！･･･馬鹿なことを･････！」

グラリ。と身体が揺れる。

吐いたことのない、大きな息を吐いた。

・

・

A「良かった･････刺しても、平気だったらどうしよう、って思ってたの」

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涙をボロボロと零しながら、Aが笑う。

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御伽噺はあながち間違っていない。

「愛する者に刺されると、永遠の命の終わりを迎える」

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・

人でない俺が、人であるAを「愛した」事実が、己の命の最後の

愛の証だなんて、なんて皮肉なことか。

・

・

和「････････A･･････！」

Aの細い肩をがし、と抱き締める。

・

A「････これで、和也は楽になれるよね？」

・

終わる。

楽になれるかは知らないが、俺のこの永久の時間は終わる。

君に届かないと知りながら、歩く足を止められないこの世界は終わる。

でも。

それは、それは、「A･････！君が、君が、俺の･････」

喉の奥も熱く、うまく言葉にならない。

身体の痛み？これが？いや、違う。

俺の心が、焼け爛れて泣いている。叫んでいる。

・

和「Aが俺の代わりに闇に堕ちる････････！」

俺の悲鳴にも似た叫びに、Aが涙でぐしゃぐしゃな顔で笑った。

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A「うん。いいよ」

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・

A「今度は。････私が、和也が泣きたい時に飛んでくるからね」

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・

A「愛してるよ？和也」

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Aの、人として最後の笑顔が月に照らされる。