＊カルマの欠片たち＊ (ページ27)

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哀しくも美しい世界＊二宮和也＊２ページ27

和「俺が見えるんだね」

そう微笑むあなたは、美しかった。

和「怖くない？」

白いシャツ姿のあなたが小さく聞き、私は「怖くない」と笑った。

・

病院の白い四角い部屋の隅で、あなたの手を握る。

・

「他の人には見えないの？」

和「ええ」

もうすぐ死んじゃう私だから見えるのかな。と幼心に思ったのを覚えてる。

・

・

「泣いていい？」

和「･････悲しいの？」

首を傾げ、そう聞かれ、あぁ････そうか、私は悲しいんだ。と初めて気付いた。

・

未来を諦めるしかない現実。

両親への申し訳なさ。病気への恐怖。でも、泣けないで生きてきた。

泣ける場所はなかった。

もうすぐ別れがくるのなら、なおさら愛する両親には笑っていたかった。

・

和「おいで」

彼は少し微笑みながら、両手を広げて私を呼んだ。

私の泣き声が病室の外に漏れないように、声を、音を、世界を、止めてくれた。

あの日からずっとずっと、私達は抱き合って眠る。

血の匂いがする日もあった。

世界の終わりのような暗闇を背負っている日もあった。

それでもあなたは夜、微笑む。

・

和「おいで」

・

いつも少し寂しそうに笑いながら、私を抱き締めるあなたを

楽にしてあげたい。

・

・

静かな夜の中、あなたの肩に頭を乗せて、

ほとんど外に出れない私はいつも言う。

「外の世界は、綺麗なんでしょう？」

あなたはいつも小さく笑う。

和「Aが思う程、世界は美しくない」

闇を背負い、そう言いながらも、光に手を伸ばそうともがく姿を知りながら

私はまたあなたの手を握る。

・

・

「和也？」

和「ん？」

黒い髪が、頬に少し影を落とす。

・

「私に遺された時間は、あとどれくらい？」

・

ほんの一瞬。

和也の指が動いたけれど、すぐにいつもの和也の空気。

・

和「あまり長くない」

・

そう答えるあなたの瞳が苦しそうなのが、私は苦しい。

大丈夫。私は、大丈夫。

・

・

「和也は、ずっと生きてくの？」

・

私の言葉に、和也は少し瞳を閉じる。

・

和「････････いつかまた、会えるよ」

・

そうね･････。

それまで、また、あなたは１人なのね？