＊カルマの欠片たち＊ (ページ25)

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優しい棘＊櫻井翔＊６ページ25

パチン。またあの音がした、瞬間。

闇から、書斎に戻る。

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和「･････････３０年前、A様も、あなたと全く同じことを望まれた」

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和「最後の１日を、どうぞお幸せに♪」

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二宮和也が書斎のドアを開いて「どうぞ、お先に？」と恭しくお辞儀をするのを

押し避けるように走り出す。

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もう、足はうまく動かない。

歳をとった。

兄貴への悔恨を、謝罪を抱え、それでもAへの愛を抱えて

生きてきた。

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翔「･････A！！！」

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白い薔薇を持ったAが驚いた顔で俺を見つめる。

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翔「･････････A････！A････！A････････！！」

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靴も履かず、芝生の感覚を足の裏に感じながら、１度だけ心と身体に刻んだAの体温を

抱き締める。

翔「･････････愛してる･･･････！」

何度も、何度も、心で叫んだ言葉を、最後の今日、君に告げよう。

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俺達は罪を犯した。

罪に苦しみ、罰を受け、それでも捨てれなかったものを、人は愛と呼ぶのだろうか。

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A「･･･････しょ、う････さん･･･････」

耳元で響く、Aの声。

耳元に届く、Aの息。

何度もそれは響き、その声と息は段々と小さく、小さくなっていく。

愛した人が、俺の胸の中で微笑みながら最期の時を刻む。

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罪を抱えた俺達を、まるで赦すかのように、

風が俺達を包む。

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Aの細い肩の向こうに、Aが背負った俺への愛が見える。

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「思い出だけで、幸せなんですよ･･････････」

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Aの、声が、薔薇の香りと共に響く。

優しい棘＊櫻井翔＊ＥＮＤ