＊カルマの欠片たち＊ (ページ24)

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優しい棘＊櫻井翔＊５ページ24

その言葉通り、あの日から

俺を悲しそうに、潤み、熱く見つめるあのAの瞳は光を失くした。

すれ違う一瞬に、お互いが時を止め、息を殺し、愛を重ねたあの熱さも

なくなった。

それでAが楽になれるなら、なんて悲しく残酷で、幸せか。

愛した罪を、堕ちた苦しみを、兄貴への悔恨を、

抱えて生きるのは俺だけでいい。

・

A。

君は俺を忘れて生きていけばいい。

忘れて、生きていけ。

穏やかに、どうか、どうか、幸せに生きていって欲しい。

・

それが、愛する君に、俺がしてあげれるたった一つのことだった。

・

・

和「あなたは哀れで惨めだ。愛したことも、愛されたことも、忘れ去られた」

・

それで満足です。同情だなんて欠片もしていないであろう二宮和也に静かに答える。

・

翔「愛したことを後悔していないんです」

Aを愛した。

俺の記憶には、ちゃんと残っている。

和「････････ワタクシも最近、随分と甘くなりましてね？」

・

二宮和也が「ご馳走様でした」とカップをテーブルに置く。

・

・

和「最後に教えに参ったのです」

翔「････････何を？」

・

・

二宮和也の黒い瞳が、俺の目を見つめて話さない。

・

・

二宮和也の左手の指がパチン。と鳴った。

･････････････！

あの時と同じ、真っ暗な闇の中。

・

浮かびあがるのは････今と全く同じ姿かたちの二宮和也と、

あぁ･･･あれは、３０年以上前の、Aの姿だ。

・

・

A「翔さんの記憶から、私を消してください」

Aの･･･････声が、響く。

・

A「私だけが覚えていれればいいんです」

・

・

A「････････翔さんを愛したことも、愛されたことも、罪も、後悔も、全部」

・

・

Aが凛とした瞳で微笑む。

・

A「私だけが背負って生きていくので、翔さんを楽にしてあげてください･･･････」

・

・

A「私、翔さんとの思い出だけで････幸せなんですよ」

・

・

闇の中で、真っ白な薔薇の花びらが、散った。