＊カルマの欠片たち＊ (ページ23)

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優しい棘＊櫻井翔＊４ページ23

和「本日は、ご報告に参りました」

翔「報告？」

紅茶を飲みながら聞き返す。

うん、今日は上手く淹れれた。

最近、Aが教えてくれたのだ。美味しい紅茶の淹れ方を。

教えてくれるAの長い睫を、白い肌を、紅茶の湯気の向こうに見た。

愛してる。

愛してる････。

永遠に言えない言葉を、紅茶と共に飲み込んだ。

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和「本日、A様のお命を頂きに参りました」

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サラリと。

あまりにサラリと言う二宮和也の言葉に、手に持ったカップとソーサーが

カチャ、と高い音を立てる。

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大きく息を吸い込む。

瞳を閉じる。

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翔「････････苦しむことは、ないですか？」

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大きな息と共に、その言葉だけが出た。

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二宮和也がカップに唇を当て、外のAを見つめながら小さく笑う。

和「ええ。眠るように、頂く予定です」

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窓の外のAを見つめる。

細い身体で、薔薇を見つめるA。

･･･愛してる。愛してる。愛してる。

この世界で届かない言葉は、あちらの世界では届くだろうか。

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和「止めないんですね、ワタクシのことを」

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二宮和也が格別、不思議そうでもない顔のまま聞く。

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翔「A･････楽になれるんですね、やっと･･････」

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翔「･････俺はね。あなたに感謝しているんです」

二宮和也が一つ、瞬きをした。

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翔「あなたは、俺の願いを叶えてくれた」

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翔「･･････Aの記憶から、俺との恋を消してくれた」

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少し風が吹いて、Aの長いスカートの裾が風に舞う。

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翔「Aは夫を失った悲しみだけを抱えて生きてこれた。

夫を裏切った罪の意識に苛まれることも、自分を恨み、憎み、後悔しながら

生きずに済んだ･･････････」

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二宮和也の指が鳴った、あの瞬間。

和「あなたを愛したあの方は、もうどこにもいません」