＊カルマの欠片たち＊ (ページ22)

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優しい棘＊櫻井翔＊３ページ22

和「人生は思い通りにいかないものですね」

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書棚の本を興味なさげにパラパラと捲りながら、二宮和也が言う。

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和「結果、あなたは経営者としての道を歩き、成功者として命を終えようとしている」

二宮和也の言葉に、怒りを爆発させて殴りかかったこともあった。

兄貴じゃない！死ななきゃいけなかったのは兄貴じゃなく、俺だ！と詰め寄ったりもした。

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いつもこの男は平然とした顔で、つまらなそうに答える。

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和「あなたの引き摺り込んだ闇の中で、A様は永遠に己を呪い、責め、

悲劇の未亡人と言われ生きていく」

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和「お前は愛してると言いながら、愛する人に茨を巻いた」

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和「全てを奪う覚悟があると言いながら、お前が奪ったのは彼女の穏やかな未来だけ」

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兄貴の葬式に現れ、祭壇の花をちぎりながら微笑む男に

返す言葉を、俺は持っていなかった。

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翔「･･･････今日は何の用ですか？」

書斎に備えつけられた小さなカウンターで、紅茶を入れる。

翔「どうぞ」

紅茶の甘い香りが、書斎に漂い、二宮和也が「どうも」と微笑んだ。

ソーサーごと持ちあげ、窓辺に立って外を眺めながら、紅茶を一口飲む。

色の白い、美しい男だと、いつも思う。

闇に住むから美しいのか、美しいから闇の中でしか生きれないのか。

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和「相変わらずA様はお美しい････」

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親父の遺した広い庭。

広大な敷地の中に建てられた２軒の家。

Aは兄貴が死んだ後も、ずっとあの家で生きてきた。

哀しみから立ち直り、静かに庭の薔薇の手入れをし、美味しい紅茶を飲み、

静かな１日を送る。

親父が生前、涙ながらに「AさんはAさんの人生を生きて欲しい」と言っても

Aは小さく微笑んで首を横に振った。

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A「私、思い出だけで幸せなんですよ」

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兄貴が愛した美しい妻は、兄貴と過ごした思い出だけを抱え

生きている。