＊カルマの欠片たち＊ (ページ3)

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Capsule＊大野智＊２ページ3

出会ったのは２年前だった。

・

僕が勤めている総合病院に救急搬送されてきたAは

細い身体と青白い顔で僕を見た。

・

せわしない、一秒を争う現場の中で、一瞬でその瞳に堕ちた。

・

恋に堕ちるということはこういうことか、と知る。

ストレッチャーのタイヤの音も、看護師の走る足音も、いくつもの機械音も

全部あの瞬間に音を止めた。

ただ恋に堕ちた。恋という水が一滴、僕の心の底に堕ちた音だけが

音のない世界に響き渡った。

・

A「･･････もう、楽にしてくれませんか？」

・

涙を浮かべてそう言ったAが、幼い頃から抱えてきた病の苦しみは

如何ほどのものだろう。

この美しい少女に、戦うことを諦めさせた闇がどれ程暗く、重いものなのか

医者として知識では知りながらも、改めて無力感に苛まれ胸を掻き毟り泣いた。

・

智「君を、助けたい」

・

あの日、君と自分に誓った。

助ける。

君を、何があっても助ける。

・

すぐに始まった恋の中で、毎日その誓いを思い出す。

助ける。助ける。助ける。

もう、君を苦しめないーーーーーーーーー。