＊カルマの欠片たち＊ (ページ14)

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永遠の記憶＊松本潤＊１ページ14

記憶に深く刻み込まれた「彼女の最期」

最期まで彼女は美しかった。

白い頬に静かに頬紅を刺す。

柔らかい髪に、摘んできた花を飾る。

何度も何度も、彼女の頬を撫で、つかの間の別れを告げる。

冷たい唇に最期のキス。

追いかけて行きたいと願い、でもいつかまた会う為に首筋に当てた冷たいナイフを

静かに床に下ろす。

・

それからは自分の命が尽きる日を待った。

事故でもいい。

病でもいい。

何でもいいから、自分の命の火が消える風が吹くことだけを祈り日々を過ごす。

己の手で命を終わらせなければ、また彼女に会える。

・

程なくして、不治の病にかかった時に安堵した。

これで、彼女に会える。

これで、彼女のいない世界から消えることが出来る。

・

愛してる。

愛してる。

愛してる。

窮屈な呼吸の中で、薄れゆく意識の中で、ただ彼女を想い、彼女に会える

瞬間を待つ。

あと少しだ。

あと少しで、君に会える。

会えたら抱き締めて、違う世界に生きていた数年を語ろう。

そしていつかまた生を授かる。君と、また地上で出会い、時を紡ぐ。

・

・

「残念！」

・

その男は霞む視界に唐突に現れた。

「この世界は、生きて苦しむことを放棄した者に優しい場所ではございません」

・

黒い服を着た、色の白い男が微笑む。

男の掌が伸びてきて、俺の胸にそっと置かれた。

・

・

「愛ゆえに死を望んだあなたに、永遠の生を」

・

・

ああ････････悪魔だ、と思った。

悪魔が迎えに来た。神ではなく、悪魔が、来た。

薄れていく意識の最後に、悪魔の笑顔を見た気がした。

「またお会いしましょう」